研究課題/領域番号 |
24500887
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
音山 若穂 群馬大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40331300)
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研究分担者 |
井上 孝之 岩手県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (40381313)
古屋 健 立正大学, 心理学部, 教授 (20173552)
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キーワード | 保育・子育て / 対話型アプローチ / リーダーシップ訓練 |
研究概要 |
本研究の目的は、「対話」を核とした保育研修プログラムの開発および評価法の開発を通して、個々の保育者の反省的実践の資質の醸成に寄与する方策についての実践的な知見を得ることにある。本年度は次の2点について重点的に研究を行った。 ①対話型研修プログラムの実践・開発:昨年度に引き続き、実践を基にしたプログラムの開発と最適化を進めた。まず現職者を対象とした研究会において対話型アプローチを導入し、継続的なテーマ研修を進める過程における保育者の意識変容を検討した。 また、本年度は養成課程や保育現場の実態に合わせたプログラムの開発を行った。第1に、全員が長時間一同に会さなくとも実施可能なプログラム案を作成し実践を行った。第2に、対話からプロジェクト活動へと接続可能なプログラム試案を作成し学生を対象に試行を行った。第3に、他職種・地域等、幅広い参加者による対話プログラム案を作成し実践を行った。 ②対話型研修の効果の評価法に対する妥当性検討:昨年度は杉村ら(2006)による保育者省察尺度および木本(2011)の集団雰囲気尺度を用いてプログラムの事前事後比較を行ってきた。このうち、杉村らの尺度は現職者を中心としたものであることから、項目の再検討が課題であった。そこで本年度は、養成課程の学生を対象にある程度のサンプル数を確保した上で、杉村らの尺度をもとに因子分析による構造的妥当性の検討と、現職者と学生との間の得点比較を行った。さらに現職者を対象とした自由記述の分析を基に、保育者としての成長のポイントについても検討を行った。 一方、プロジェクト活動に関連した評価については、TEG、コミュニケーション不安尺度、リーダーシップ効力感尺度、Big5性格特性を用いて、大学生を対象としたリーダーシップ訓練の事前事後比較による検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①対話型研修プログラムの実践:本年度は昨年度に引き続き研修プログラムの調整・最適化を行った。まず、現職者を対象に対話型プログラムの実践と評価が行われた。保育者への個別のインタビュー調査により、他職員と意見を交わすことによる子どもや保育の見方の広がりや深まりが出てきたことが示され、継続的カンファランスで対話を重ねたことによって保育者の意識にポジティブな変化が見られたことが示唆された。次に、これまでの実践から浮かび上がった課題に対応したプログラム案を開発した。相互インタビューを中心としたプログラム試案と、対話からプロジェクト活動へと接続可能なプログラム試案については、学生を対象とした試行も行った。また、地域教育セミナーでの対話プログラム試案の実践も行った。以上のように、いくつかの課題に対して研修プログラムの調整・最適化が図られており、保育現場や養成課程においてより使いやすいプログラムが示唆されたと言えるであろう。 ②対話型研修の効果の評価法に対する妥当性検討:本年度は、保育の省察に関しては杉村ら(2006)について、ある程度サンプル数を確保し多変量的な検討を行った。また、プロジェクト活動に関連しては、リーダーシップ効力感や、コミュニケーション不安尺度などを用いて、事前事後評価の検討を行った。 一方、実践フィールドを対象とした介入研究において、比較対照群を設けた事前事後測定を当初計画していたが、本年度は行わず、代わりに介入群について個別のインタビュー調査を行った。インタビュー調査により研修前後での個々の変容ポイントやその具体的なエピソードを聞き取ることが可能で、質的な情報を十分に得ることができた。今後はインタビューの結果のより詳細かつ量的な内容分析が求められるところである。
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今後の研究の推進方策 |
①対話型研修プログラムの実践:養成課程の学生を対象とした試行を引き続き行い、半期授業の枠を使ったプログラムの最適化を行う。特に、本年度に試行を行ったAppreciative Inquiryをベースとしたインタビューを中心としたプログラム試案と、対話を重ねながらプロジェクト活動へと接続可能なプログラム試案については、引き続き実践を重ねるとともに、自記式尺度の事前事後比較によって訓練効果を検討することを考えている。 ②対話型研修の効果の評価法に対する妥当性検討:杉村らの省察尺度については引き続きデータを収集し、多変量的な検討を行う予定である。特に杉村らの改訂尺度である杉村(2009)についても収集し、従来版との比較、および、対話効果を評価するいくつかの新規項目を追加した上で、それら項目との妥当性比較も行う予定である。これについては、連携研究者の所属する養成校の学生などを対象に、質問紙調査を予定している。 また、プロジェクト活動に関連した評価についても、引き続き、リーダーシップ効力感や、コミュニケーション不安尺度などを用いたデータ収集を行う。 さらに、本インタビュー調査で収集された質的な情報の内容分析手法や、インタビューの質問項目の再検討も求められる。
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次年度の研究費の使用計画 |
データ分析作業のための人件費・謝金を計上していたが、本年度は質問紙調査の一部を変更したため支出されなかった。 インタビュー調査のデータ入力・分析作業を、次年度に持ち越して行うこととした。
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