研究課題/領域番号 |
24500888
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
河村 美穂 埼玉大学, 教育学部, 教授 (00361395)
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研究分担者 |
清水 理子 (片平 理子) 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (70204427)
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キーワード | 食生活 / 自立した食生活人 / 家庭科教育 / 調理学習 / 調理実習 |
研究概要 |
25年度は主として2つの研究を進めた。 ①4月に実施した「家庭科教育履修者(成人)に対するアンケート調査の本調査結果をふまえて詳細な分析、考察を行った。 先行研究をもとに設定した日常的に行う料理21種類、小学校家庭科の学習内容となっている調理技能5種類、調理に関する基礎知識5つの得点と、食生活に関する因子6つの関連を考察検討した。その結果、調理を日常的に行っておりある程度できると認知している人は、食生活に関する因子のほとんどでそうでない人よりも高い得点を示した。つまり調理を日常的にしている人は、社会的な消費者としての自覚を持ち、食文化を大切にして共食の機会も多く、さらに健康を食事の面から考えるということが明らかになったのである。調理をすることは、食生活を豊かにする要の役割を果たしていることが推察された。 ②調理技能の獲得のプロセスを、技能指導という点から検討した。 なかでも大学生がキャベツの千切りや大根の皮むき、きゅうりのスライスなど包丁を用いた技能をどのように獲得するのか、また技能を獲得することが生活上にどのような変化をもたらすのかを、授業記録、技能調査等をもとに明らかにした。その際に、小学生の調理技能とその学びの実態、中学生の課題調査などと比較検討し行った。その結果調理技能を習得するということは、できることが拡大していくような気分、また新たな調理に挑戦してみようという気持ちを育み、できそうな気持を持つようになることが明らかになった。調理技能の獲得レベルは個別性が高いが、ほとんどの学生が3か月の授業中の調理体験によって調理技能を向上させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は2つの学会において調査研究の結果を発表した。26年度はこれらを論文として投稿することを計画している。 さらに、調理技能の獲得と食生活の変化に関する研究と調査研究の知見を併せて自立した食生活を送る際に必要とされる調理技能の特徴を明らかにすることが26年度の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
24年度後半より課題としていた、調理技能に関する学習プロセスの質的分析については、調理技能の獲得の実態を明らかにすることを最優先目標とし、その結果にともない、必要な部分について行うこととし計画を変更する。 その理由は、なによりも調理技能の習得実態を測るということが、これまで十分に行われておらず、何をもって習得したと言えるのかを見極める必要があると考えたからである。 また、調理技能を習得した状態が説明可能となれば、その知見はそのまま調理技能の指導方法として利用できると考えた。経験と勘をもとに教えてきた調理技能の要点を科学的に理解できるようにすることは、調理を日常化するという視点からも、社会人が気軽に調理を楽しみ食生活に関心を持つという視点からも有用な研究となると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は、研究打ち合わせ日程の調整が難航したため、会議打ち合わせの予算を消化することができなかった。 さらに、アンケート調査入力等の謝金は、一部学生ボランティア等の協力を得て予算を消化する必要がなくなった。インタビュー調査については、次年度に実施時期を延期したことからこれらのテープお越し料金を使用できなかった。 26年度は、これまでの研究を整理し統合することを目指す必要からも、研究代表者、研究分担者、および研究協力者が一堂に会し、議論を深めて自立した食生活を送るということの意味、調理がその核となりうるための条件を明らかにし、そのために小中高等学校における家庭科教育では何をどのように学習する必要があるのかを検討したい。 さらに、インタビュー調査のデータ処理等に謝金を多く必要とする。 これらの議論を進めるために神戸、埼玉での研究会開催にかかる費用・旅費を大幅に想定している。さらに、研究の成果は報告書としてまとめる予定であるため、この印刷製本費にも予算を多くとる予定である。
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