研究課題/領域番号 |
24500892
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
倉持 清美 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (30313282)
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研究分担者 |
妹尾 理子 香川大学, 教育学部, 准教授 (20405096)
望月 一枝 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (60431615)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 家庭科教育 / 保育 / レッジョ・エミリア / ナラティブ / カリキュラム |
研究概要 |
本年度の主な研究業績としては大きく3つある。第一に、保育学習の先進的な実践があるイタリアのレッジョ・エミリア市、ボローニャ市を訪問し、実際の保育現場を観察し、教育の専門家であるペダゴジスタやボローニャ大学の教員にインタビューすることで得た成果である。子ども達が抱える現代的な課題に応対していくために、望ましい就学前の教育のあり方を親も含め様々な人たちが話し合い、常に改善しようとしている様子がよくわかった。子どもの学びを複数の手段で評価し、重層的に評価をする工夫をしていた。また、保育現場での空間の使い方は様々な工夫がなされていて、子どもの様々な活動を支え学びにつなげているとがわかった。 第二には、保育学習で使用した「ナラティブ」を食領域や衣服領域にも活用できないかを検討した。保育学習で得られているナラティブの効果が他領域でも使用するとができるかどうかを、その領域の学びの特徴から考えることができた。 第三には、国内外の関連する論文を収集し本研究の理論的枠組みを検討するとともに、ふれ合い体験の内容とその前後の授業の内容との関連を研究し、ストーリー性のあるカリキュラムについて検討するために、データを収集することができた。事前事後の授業の記録、生徒へのアンケート調査、ナラティブ、ふれ合い体験の記録を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は事前事後の授業を工夫してふれ合い体験を生かし、幼児理解を勧めることができるカリキュラム・イノベーションを目指すことにある。その際に、家庭科の他の分野ともリンクさせながら、中学生が実生活とレリバンス(つながり)を感じられるカリキュラムを開発し、その学習を評価して研究の妥当性・客観性を追究することももくてきとしている。 本年度は、レッジェ・エミリア市、ボローニャ市を訪問すること、国内外の研究をレビューすることで本研究の理論的枠組みを作成することができた。更に、ふれ合い体験を中核として保育学習を検討するための資料の収集、保育学習で有効であったナラティブの活用を食や衣の他領域にも汎用できないかを検討することができた。 これらの研究実績は、研究目的を実現するために非常に重要なことであり、当初立てた研究計画に則している内容であり、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
①「他の分野とリンクしたカリキュラム」について特に住分野とのリンクを目指し、住分野を専門とする研究分担者である妹尾を中心に検討する。「社会的レリバンスを備えたカリキュラム」については、家庭科教育学を専門とする研究分担者の望月を中心に担当する。検討結果を総合してカリキュラム開発を行う。②開発したカリキュラムを実効性のあるものにしていく。研究協力者の実践校や、研究責任者や研究分担者が関連する中学校家庭科で実際にカリキュラムに基づいた実践を行い、その効果について検証する。前年度より引き続き行ってきた授業場面の記録・質問紙調査と、追加して実施する聞き取り調査の分析を経て、効果が検証されないものに関しては、再びカリキュラムの開発の検討をする。このとき、開発したカリキュラムを実施した教員も交え、よりよりカリキュラムにするための話し合いを持つ。 更に、2年間の研究で、カリキュラムの開発、実践、効果の検証の過程を循環する。実証できたカリキュラムについては、①日本家庭科教育学会や質的心理学会で発表し、学会の批評を得たうえで、論文にまとめる。②実践のポイントや具体的な実践方法、教師の言語活動や立ち位置、教材の用い方などについてカリキュラムガイドブックとしてまとめ、中学校家庭科教員や子育て支援課などが広く活用できるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、学校現場で収集したデータ分析が中心となる。当初の計画では25年度から行う予定であった授業場面の記録や質問紙調査を今年度から実施することができたので、当初想定していた25年度の予算が前倒しによって減ることは、研究進行上、問題はない。26年度では、研究成果を取りまとめたガイドブックを作成する予定である。
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