本研究の目的は,日本と韓国の教員養成課程の大学生におけるしつけと虐待に関する意識を明らかにすることである。将来教員になることを目指す教員養成課程の大学生におけるしつけと虐待についての認識、子ども虐待に関する知識の有無や程度を明らかにするとともに、生育環境と認識との関連をみるために,2013年9月から2014年1月の間に日本と韓国の教員養成課程の大学生を対象に調査を行った。分析内容は,「しつけと虐待の経験」「しつけと虐待の認識」「児童虐待関連の知識,教育を受けた経験の有無」等である。分析の結果,以下のことが明らかになった。1.日本の韓国の大学生の3-4割の人は,子どもの頃,親から身体の一部をたたかれた経験がある。韓国の大学生は,身体の部位によって,しつけ,または虐待と考えていたが,日本の大学生はしつけとして認識していた。2.両国の大学生の多くは,しつけのつもりであっても,子どもの心や体を傷つける行為は虐待になると考えていた。その認識の判断基準には,かれらがどのような家族のもとで育ち,どのようなしつけや虐待を受けたのかということが少なからず影響していた。3.9割以上の大学生が虐待だと認識した行為は,日本の場合は,「子どもにやけどを負わせる」などの7行為,韓国の場合は,「子どもの顔をたたく」などの5行為である。4.しつけとしての体罰を容認する大学生は,容認しない大学生に比べて,様々な行為をしつけとして行ってよいと考える傾向がある。5.児童虐待に関する情報に接したり,大学で講義を受けた経験がある大学生は,それぞれの行為を虐待として認識する傾向がみられた。一方,講義を受けることで,今後,被虐待児童を発見した際,うまく対応できるか不安を感じるようになっている大学生も多くみられた。6.児童虐待に関する的確な判断と対応のためには,教員になる前の段階から児童虐待防止のための学習が必要である。
|