子ども・親・高齢者や地域住民の新たな関係づくりについて、学校支援地域本部事業に注目して検討した。先進地域における実態調査から、地域ボランティアの果たす役割や効果を地域教育力の観点から検討した結果、当事業の教育効果や、教師への効果的な影響が明らかにされ、この事業を契機として学校と地域に新たな関係が加わることが示された。生徒・教師・地域ボランティアの意識調査から、事業に取り組むことで地域と学校の距離が近づいた、学校の荒れに収束がみられる、地域住民の意識変化、ボランティア・教師ともに事業の評価が高い、ボランティアと教師の意識に差があり両者間に温度差があることなどが明らかになった。子ども・学校・地域の三者の関係認識でも温度差が認められ、それぞれの関係を可視化することの重要性が示された。このため、三者関係の可視化についての地域住民による評価を行うとともに、可視化を推進する実践的試みとして調査報告会や研修会を開催し、可視化による効果が大きいことを明らかにした。 先進校の6年間の継続調査から、地域住民が関わることで、生徒の学力や人間力の向上に資することが示唆された。学校を核としたコミュニティ意識の醸成、新たなまちづくり活動へつながる可能性も示唆された。一方、直接的に家庭生活支援に資するという成果は得られず、家庭生活支援の可能性やその必要性について実証されたものの、家庭生活への直接的関与や影響を及ぼす困難さも明らかとなった。取組を通して子どもの居場所づくり、子どもへの声かけなど地域住民が関心を寄せて、彼らに将来の方向性を示せる関係の構築が重要との研究結果をふまえ、本研究の成果を地域および広く社会に還元することにした。全国の関係機関から反響が大きく、地域特性との関係をふまえ、それぞれの状況に合わせた実践が必要とされていることが明らかとなった。
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