九州における高齢期の生活研究を継続するなかで、「生活支援ネットワーク形成」及び「高齢期生活の持続可能性」という観点から調査研究をしている。本年度は、高齢者の市民的資質に着目し、急激な高齢化、過疎化を経験している離島における消費者市民社会構築の可能性を「自助・公助・共助」の側面から分析した。 調査対象地は、長崎市の炭鉱閉山の島(廃炭島)A島である。2007年より年に2~3回の実地調査を行い、質的調査を試みている。また、比較のために廃炭の島B・C島や他の離島の現地調査もしている。最新のA島現地調査は2015年2月である。 A島はM鉱業100年(閉山1986年)、B島はN鉱業30年(閉山1972年)、C島はMM鉱業40年(閉山2001年)の歴史をもつ。したがって、高齢者層には、いまだに職階制意識が根強く残っている。A、B島はすでに、またC島も限界集落となりつつある。高齢者世帯は、「夫婦のみ」か「一人」である。子との同居慣行はない。島の高齢者の自助、共助の動きには学ぶべきところが多くあるが、こうした炭鉱閉山の島における消費者市民社会の構築には、公助である行政の支援(手助け・仕掛け)が不可欠であるという結論を得た。 研究成果については、日本家政学会第66回大会(2014年5月、北九州)と日本消費者教育学会第34回大会(2014年10月、札幌)においてポスター発表をした。また、「消費者教育」(日本消費者教育学会誌)に論文を投稿中である。さらに、現在、本研究の集大成として書籍の出版に至る様に編集・執筆に取りかかっている。
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