研究課題/領域番号 |
24500904
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研究機関 | 北翔大学 |
研究代表者 |
風間 雅江 北翔大学, 教育文化学部, 教授 (60337095)
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研究分担者 |
本間 美幸 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 准教授 (30295943)
八巻 貴穂 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 講師 (30364293)
本間 真理 札幌医科大学, 医学部, 助教 (90423780)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ウェルビーイング / 介護職 / 介護家族 / 主観的幸福感 / バーンアウト / 精神的回復力 / 高次脳機能障害 / 失語症 |
研究実績の概要 |
今年度は、介護職の主観的幸福感に影響を及ぼす要因をより詳細に把握するために、前年度までに収集した質問紙調査のデータをさまざまな観点から再分析した。その結果、訪問介護員の方が施設介護職に比べて年収が低いにもかかわらず、主観的幸福感、精神的回復力、個人志向性、社会志向性が高く、施設介護職・訪問介護員共に、主観的幸福感に対して精神的回復力と個人志向性が正の影響を、バーンアウトが負の影響を及ぼすことが確認された。 訪問介護員のバーンアウトに焦点をあてた分析では、年収が高い常勤者がバーンアウト傾向が顕著であり、対人援助の職務以外の様々な責任が課され疲弊しやすい状況にあることが示唆された。さらに、バーンアウトを構成する因子である情緒的消耗感、脱人格化、個人的達成感の低下の全てに対して、主観的幸福感が負の影響を及ぼし、気分転換方法および問題解決行動においてバーンアウトの高低による差がないという結果が得られ、バーンアウト予防には現在や未来に対するポジティブな認知が重要であることが示唆された。 以上の調査結果をふまえ、経済的負担が少なく時間的空間的制約が小さく、かつ、効果的に心身のストレスを低減する効果のある心理介入的アプローチとして、認知および感情といった心理的側面に焦点をあてたセルフケアの方法、具体的には、マインドフルネス・ストレス低減法を主軸とした心理教育とセルフワークの実施プログラムを、介護家族対象と介護職対象それぞれについて立案し、来年度の実践研究に向けて精査と検討を行った。 介護家族と要支援者の主観的ウェルビーイングについては、高次脳機能障害の患者・家族会に継続的に参加し支援活動を実践しつつビデオ記録を集積した。失語症同障者会における失語症者同士のピアサポートと家族間のコミュニケーションが介護家族と要支援者の両方の主観的ウェルビーイング向上に繋がっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度まで集積してきた実証的データを多面的に分析したことにより、介護者の主観的ウェルビーイング向上、ひいては、ストレス低減にむけた心理介入的アプローチを具体的に考案するための知見を多く得ることができ、今年度までで得た知見を、日本心理学会、日本介護福祉学会、北海道心理学会、日本リハビリテーション医学会地方会の発表、および学術論文としての投稿によって幅広い領域に公表した。 一方で、当初の予定であった今年度内での心理介入的アプローチの実践研究が計画立案の段階に留まり、実践研究は次年度に持ち越された。
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今後の研究の推進方策 |
介護家族および介護職への心理介入的アプローチの実践研究について、研究代表者が所属する大学の今年度の研究倫理審査委員会での審査を通過し、実施の承認を得たため、来年度、大集団での心理教育プログラムと小集団での心理介入プログラムの両方を行う。介護家族を対象として、「介護をする人のためのセルフケア講座」を年2回開催し、30人程度の規模で参加者を募り、ストレス・マネジメントのセルフチェックと対処法についての心理教育、および、マインドフルネス・ストレス低減法等のワークの実践、身体に負担の少ない介護方法の講義等を行う。本講座のなかで、自宅でのセルフ・ワークを継続的に行うことを勧奨し、実施した群と実施しなかった群とで、数種の心理尺度の得点比較を行い、介入の効果を検討する予定であり、本実践研究については既に広報を行っている。 介護職を対象とした心理介入的アプローチの実践研究として、北海道内の高齢者介護施設のうち、調査協力の了解を得た施設において、施設内研修の機会に時間をいただき、申請者が、介護職のストレス・マネジメントについての心理尺度によるセルフチェックと対処法についての心理教育、および、マインドフルネス・ストレス低減法等のワークを行い、数種の心理尺度による介入効果の検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は過年度実施の調査データの分析および学会発表や論文による知見の公表、および、心理介入的アプローチのプログラム立案および精査に時間を要し、新たな調査によるデータ収集や介入研究が実施できなかったため、執行額が減額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は、今年度精査した介入プログラムの実践研究を展開するにあたり、協力者への謝金、調査交通費の支出が増額となる予定である。 実践研究の結果をふまえ、介護家族および介護職が日常生活のなかで、手軽に参照することができるような、ストレス低減法等をわかりやすくまとめた手帳タイプの冊子の刊行および配布を検討している。
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