• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

子育て支援職の再検討:リスク支援と予防支援における役割モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 24500905
研究機関十文字学園女子大学

研究代表者

上垣内 伸子  十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (90185984)

研究分担者 星 三和子  名古屋芸術大学, 人間発達学部, 教授 (30231004)
向井 美穂  十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (40554639)
塩崎 美穂  尚絅大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (90447574)
キーワード子育て支援 / リスク支援 / 訪問型支援 / 児童福祉施設による地域連携型支援 / フィンランド、ネウボラ調査 / 妊娠期からの継続的支援 / 聞き取り調査
研究概要

1.調査:1年目の平成24年度に行った、リスク支援・予防支援の意識の高い国内4施設(熊本市、名古屋市、新宿区、戸田市)での実地調査から、母子保健・小児保健およびソーシャル・ワークの視点をもった支援の必要性が浮かび上がったことの発展として、保健師と連携した妊娠期からの切れ目のない子育て支援と、地域の人的資源を活用した地域を基盤とした支援の2側面に着目し、そうした特徴を持つ海外および国内施設の調査を行った。
(1)海外調査:フィンランドの保健師が地域の家族と密に関わることで健全な子育てを支えている「ネウボラ」での妊娠期から就学に至るまでの支援の実際の調査。3都市(ヘルシンキ、タンペレ、ウロヤルヴィ)にて保健師への聞き取りと施設見学。
(2)国内調査:①古くからの児童養護施設がになう地域支援の聞き取り調査(名古屋市)。②民生委員、児童委員と連携して保育園が行う学区内の公園での支援活動への参加と聞き取り(熊本市)。③保健センターと支援センター併設保育園との連携による支援施策についての行政担当者への聞き取り(戸田市)。④地域子育て支援拠点事業に加えて家庭訪問型の支援活動を開始したNPO代表への聞き取り(和光市)。
2.結果: ①フィンランドの「ネウボラ」では、高い専門性を持った保健師が担当地域の家族に対して妊娠期から出産子育て期まで一貫して担当し、必要に応じた支援や相談に当たることで安心が得られ、結果として子育てのリスク支援・予防支援となっていた。②地域の状況を把握することができる程度の範囲を対象として(例:小・中学校区を1単位)、保健師、ソーシャル・ワーカー、民生委員・主任児童委員など制度としての家庭訪問が可能な職種と連携することにより、リスク予防が図られる。③研修を受けた地域住民が支援者となる家庭訪問型支援は、地域の支援意識醸成の役割も果たしている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度の国内での聞き取り調査の中で示唆された支援特性を、海外の制度や国内の他の自治体や施設の支援事業においても確認するという発展的な調査を行うことができた。訪問した調査先は、フィンランド3都市5施設、国内(名古屋市、熊本市、戸田市、和光市)4施設・団体・行政である。いずれにおいても、支援職への聞き取り調査から多くの有用な示唆を得ることができた。
妊娠期からの切れ目のない支援が、リスク支援の方略として有効であることから、フィンランドの「ネウボラ」を訪問し、日本での保健所および保健師の支援と比較しながら検討し、担当家族と保健師の密なやりとりが子育ての自信につながることを確認した。また、日本においても、妊婦健診から出産まで関わる助産婦と保健センター(保健師)との連携によって、妊娠期からの切れ目のない支援が可能になり、リスク予防が図られることを確認した。
リスク支援の場合には、訪問型支援も有効であることが昨年度調査より示唆されたことにより、地域の子育て支援グループが訪問型支援を始めるに至った経緯と支援の実際を聞き取り調査し、地域の親たちが地域住民を巻き込んで、子育ての困難さに共感的に関わろうとする支援の特性について検討し、こうした事業が行政と連携して展開されるとき、有効性を発揮することを確認した。さらに、保育園が行う民生委員・児童委員と連携したアウトリーチでは、すべての親子を対象として子育ての楽しさを伝えようとする支援姿勢をもつことによりリスク家族も参加しやすくなり、結果としてリスク予防支援となっていくことを確認した。入所型の児童福祉施設(児童養護施設、乳児院)では、多職種間が連携して一時保護まで選択肢にした奥行きのある支援が可能であることから、地域に深く根付いた施設における幾重にも用意された支援事業が地域の子育ての困難さをもつ家庭への有効な支援となり得ることを確認した。

今後の研究の推進方策

妊娠期からの切れ目のない支援や、子育てに困難を抱えた家族のニーズに寄り添い効果的なリスク支援を行っている地域は、実施主体と行政との連携が非常に図られていること、それを可能にしていくキーパーソンの存在があった。そのことを踏まえて、今年度は、実際の支援担当者や施設に対して調査した地域では行政担当者に、行政担当者や公立施設に対しての調査を行った地域では実際の支援担当者に聞き取り調査を行い、支援実施主体と行政との連携のあり方について考察する。調査対象は、これまで調査を行った国内5都市および新規2都市を予定している。
また、フィンランド調査の資料を翻訳し、ネウボラにおける子育て支援について報告をまとめる。これらの結果を基に、リスク支援・予防支援を行う支援者の資質について考察する。

次年度の研究費の使用計画

ユーロ高騰のため、フィンランドへの調査とタリンへの学会発表の渡航費が当初の予算を超過したことより、次年度予算から10万円の前倒し請求を行った。その前倒し請求額から、ユーロ高騰のための旅費超過分を差し引いた残額が発生した。
もともと平成26年度の予算からの前倒しの残金であることより、平成26年度に計画した調査研究活動費に組み入れて使用するものとし、そのための計画案の変更はない。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「子守り学校」から「保育所」へ-近代日本における乳児保育実践の生成-2013

    • 著者名/発表者名
      塩崎美穂
    • 雑誌名

      児やらい(尚絅大学短期大学部子育て研究センター)

      巻: 第10巻 ページ: 37-46

  • [学会発表] 子育ち・子育て支援におけるリスク支援(2) ―保育園型の地域との連携2014

    • 著者名/発表者名
      塩崎美穂,星三和子,上垣内伸子,向井美穂
    • 学会等名
      日本保育学会第67回大会
    • 発表場所
      大阪総合保育大学・大阪城南女子短期大学
    • 年月日
      20140517-20140518
  • [学会発表] 子育ち・子育て支援におけるリスク支援(3) ―地域における訪問型支援2014

    • 著者名/発表者名
      上垣内伸子,塩崎美穂,星三和子,向井美穂
    • 学会等名
      日本保育学会第67回大会
    • 発表場所
      大阪総合保育大学・大阪城南女子短期大学
    • 年月日
      20140517-20140518
  • [図書] 保育者論-共生へのまなざし-[第3版]2014

    • 著者名/発表者名
      榎沢良彦・上垣内伸子[編著]浜口順子・矢萩恭子・山田陽子・鈴木真廣・若松亜希子・向山陽子・義永睦子・鈴木正敏・福元真由美[著]
    • 総ページ数
      292
    • 出版者
      同文書院

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi