研究課題/領域番号 |
24500906
|
研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
粕谷 美砂子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (80369446)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 女性農業者 / 農山漁村 / 生活経営 / ジェンダー / 情報アクセス |
研究実績の概要 |
2014年度は2013年度に引き続き、第1に、2014年9月に、タイ北部チェンライの山岳少数民族アカ族の女性の経済的自立を目的としている食品加工技術支援プロジェクトに参加し、聞き取り調査を行った。本プロジェクトでは、日本の元生活改良普及員が、現地の農産物を活かした食品加工技術及び食品衛生について、継続的に支援・指導を行っている。将来的にはそれを販売し、収入を得ることを目的としている。本研究は、日本の農山漁村の女性農業者を主な対象としているが、本プロジェクトの支援プロセスは、日本の戦後の生活改善普及事業の展開とその方法を活用しているものであること、また、日本の農業の6次産業化との類似点・相違点を把握することが可能であるとの視点から、本研究を遂行するうえで重要である。山岳少数民族の持続可能な生活経営及び情報アクセスの困難性とアクセス方法・手段について、現地聞き取り調査を継続中である。 第2に、2012年9月から11月に実施した、千葉県東葛飾地域における女性農業者の社会参画の現状と課題に関するアンケート調査(回収数:女性農業者137名、男性農業者50名)を分析し、その結果を、2014年9月に開催された日本農村生活学会にて報告(共同)した。調査からは、女性農業者自身が「男女の固定的な役割分担意識」を持っており、家族への気兼ねがあることが考察された。社会参画には家族の応援は欠かせないが、女性農業者はその応援を明確には感じ取れないでいる。女性農業者は責任をもって役職に就くことによって、視野が広がり、エンパワーメントされている。女性農業者は、農業経営に関係する情報を、新聞(41.7%)、農業専門誌(41.7%)、夫に聞くこと(37.3%)から得ていた。男性農業者には、若い段階から社会参画へのプロセスが常に用意され、経験を積み上げていけるが、女性農業者には十分ではないことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの研究達成度として、本研究目的の第1点目である、農山漁村における社会情報としてのジェンダー統計視点の重要性の確認については、「2010年世界農林業センサス」を用いて、2005年以降の農業センサス統計のジェンダー統計としての一定程度の改善を評価した。第2点目の、農山漁村の男女共同参画と情報に関する動向の整理は行った。しかしながら、以下の3点については、研究の最終年度の課題として残されている。第1に、既に実施したアンケート調査の補完事例調査としての聞き取り調査、生活時間調査の実施、分析である。これは、調査協力者の都合により、実施が困難となり、次年度に見送られた。第2に、タイ北部チェンライの山岳少数民族の持続可能な生活経営及び情報へのアクセス方法、手段、困難性の分析、第3に、情報取得と女性農業者の地位向上との関連性についての分析・考察である。
|
今後の研究の推進方策 |
国内外の農業政策に関連した厳しい情勢の中で、女性農業者の生活経営に必要な情報とは何か、情報収集の手段、プロセス等、女性農業者の生活経営に密着した情報アクセスの現状把握は、男女共同参画社会における女性農業者の地位向上を考えるうえで重要である。また、情報へのアクセスの違いは、女性農業者の主体性の確立や社会参画、家族や地域におけるジェンダー課題と関わっている。この問題意識について検討し、農山漁村における持続可能な生活経営と女性農業者の情報アクセス(情報入手と発信)について考察し、研究の最終年度として本研究課題をまとめる。 具体的には、第1に、既に実施したアンケート調査の補完事例調査としての聞き取り調査、生活時間調査の実施、分析を行う。第2に、2014年6月に実施した宮城県南三陸町生活研究グループ及び関係機関等への聞き取り調査の分析を行う。第3に、2013年度、2014年度に実施した、タイ北部チェンライの山岳少数民族アカ族への聞き取り調査を2015年度も継続して実施・分析し、これまでの調査結果全体をまとめ、考察を行う。その結果を、学会にて報告し、投稿論文を執筆する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2012年度に千葉県H地域農業事務所の協力を得て、「女性農業者の社会参画に対する意識の実態調査」としてアンケート調査を実施し、その結果を2014年度日本農村生活学会にて報告した。このアンケート調査を補完する事例調査として、農業者夫妻、又は家族への聞き取り調査、生活時間調査を実施する予定であったが、調査協力者の都合により、その実施が困難となったため、未使用額が生じたことが主な理由である。このため、最終年度に計画していた本研究課題のまとめ・成果をWebサイト上で公開するための費用についても未使用となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
補助事業期間の1年延長が承認されたため、最終年度として、以下の3点を使用する計画である。一つ目には、上記理由により実施が見送られた、農業者夫妻、又は家族への事例聞き取り調査、生活時間調査を実施する。二つ目には、北部チェンライの山岳少数民族アカ族の女性の経済的自立を目的とした食品加工技術支援について、その進捗状況と技術支援の成果を把握するため、再度の聞き取り調査が必要である。これら調査の謝金、旅費として使用予定である。三つ目として、本研究課題の最終年度として得られた知見のまとめ・研究成果をWebサイト上で公開するための費用として使用する。
|