2015年度は、2013年10月、2014年2月、2014年9月に引き続き、2015年7月にタイ北部チェンライの山岳少数民族アカ族の女性の経済的自立を目的としている食品加工技術支援プロジェクトに参加し、聞き取り調査を行った。本プロジェクトでは、日本の元生活改良普及員が、現地の農産物を活かした食品加工技術及び食品衛生について、支援・指導を行っている。本研究は、日本の農山漁村の女性農業者を主な対象としているが、支援プロセスは、以下の点で本研究に関連している。第1に、食品加工技術支援は、日本の戦後の生活改善普及事業の展開方法を活用したものであった。従って、このプロセスには、現在の日本の農業の6次産業化の方法を援用可能ではあるが、目的、習慣等には違いが見られ、日本と比較すれば、初動の段階であると考察した。今後の課題として、食品加工と販売の連動及び継続性、加工技術の定着と品質の安定化、販路拡大の可能性等が明らかとなった。これまでは、原材料の販売のみであったが、時には国境を越えた観光地での商売を通じて、付加価値のある商品販売に関する情報を得ていた。これら生産活動への女性の関わり方や収入の配分など持続可能な生活経営の観点から、引き続き今後の展開に注目する。これらの研究成果は、2015年10月に開催された日本農村生活学会にて報告(共同)した。 この他、山口県防府市女性起業グループ企業組合による農家レストランや宮城県仙台市の家族経営による6次産業化の事例等、聞き取り調査を行った。さらに、元生活改良普及員からは39年間に及ぶ仕事内容について聞き取り調査を行い、農水省の普及推進事業の活用、課題解決手法、人材育成、農業者への情報提供者としての役割、効果等を確認した。 本研究最終年度としては、これまでの研究成果の一部を、女性労働問題研究会編『女性労働研究』第60号に執筆し、ホームページに掲載した。
|