3歳未満児が、特定の保護者の養育の場である「家庭」から離れて、同年代の乳児と関わり合いながら人生で初めて集団生活を経験する場として、我が国では、「保育所」と「乳児院」が存在する。3歳未満児保育は、保育者の適切な働きかけだけでなく「個別的配慮」と「集団的共感」が存在する場として社会的にも認知されつつあるが、新しく入所する子どもにとっては、「ひと」との関係性だけでなく「もの」や「空間」のあり方が、心理的拠点形成や子ども自身の主体的な活動のあり方に影響を与えると考えられる。そこで、本研究では、全国の乳児院保育者を対象とした保育環境に関する意識調査と、保育者へのフォーカス・インタビューを通して、乳児院における3歳未満児の保育室環境に関する意識とその変容プロセスを明らかにし、さらに、2009年から2011年度までに行った科研費助成研究の成果を踏まえ、保育者の保育環境への意識および保育室環境のあり方について検討していくこととした。全国1338名より回答を得た保育所保育者の意識調査結果からは、実態項目について因子分析したところ、「保育者の視野の広さが反映された環境」「日常のケアのための十分な環境」「安心感のある快適な環境」「子どもの主体性が配慮された環境」の四因子が抽出された。さらに第一因子と第三因子が、保育者歴・年代との間に有意差があったことが確認された。また、全国1459名より回答を得た乳児院保育者の意識調査結果からは、実態の平均3.78、重要度の平均4.56で有意差があったことが確認された。また両者を比較すると、「子どもの主体性」への配慮や「遊びの動と静」への配慮などについての項目の割合は保育所調査のほうが高いのに比べ、「移行対象」や室内の安全性に関する項目は、乳児院保育者のほうが高いことが明らかとなった。今後さらに育児観と保育環境観との関連などについても検討していきたい。
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