研究課題
最終年度は、今後における絞り染めの新しいプロダクト開発を念頭に、ヨーロッパにおける日本の絞り染めに対する認知度やデザインに対するイメージを調査した。具体的には、2015年9月にフランス・パリで開催された「MAISON & OBJET」会場にて、アンケート調査を行った。周知に様に「MAISON & OBJET」には、ヨーロッパ各地からはもとより、世界中からデザイン関連のバイヤーが集まる見本市であり、ここでのアンケート調査は有用である。結果、ヨーロッパを中心にアジアを含む数カ国のバイヤーからアンケートを回収することができた。その一端を述べれば、日本の絞り染めは、バイヤーレベルでは概ね認知されているものの、自発的・積極的に購入しようとする対象では無い。ただし、絞り染めの実物を見せた上でのイメージを聞くと、概ね「魅力的である」と捉えており、新しいプロダクトが開発されれば、興味があるとの意見も多かった。これまでの一連の調査を通して、日本、中国、ヨーロッパそれぞれでの絞り染めプロダクトに対するニーズの把握を行うことができたが、こうした試みはこれまでに無く、また本研究の目的である「衰退する伝統産業の観光資源化」に対する有効な知見に成り得ると考えるものである。一方、研究初年度並びに次年度に行った「関連生活景観」に関する調査では、主に伝統的建造物の残存状況とその現状の詳細なデータを、現地調査を通して得るに至った。このデータは既に、有松地区の「重要伝統的建造物群保存地区」指定に向けて有効に活用されており、また、筆者らの活動に関連して、地域における新たな事業参入者(ゲストハウス、土産物屋、新たな絞りプロダクトの販売ショップ等)も認められ、観光客は増加傾向にあると言える。以上から、本研究の目的は概ね良好に達成されたと言える。
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京都嵯峨芸術大学紀要
巻: 第41号 ページ: pp.25-32.
「デザイン理論」意匠学会
巻: 第67号 ページ: pp.17-30.