研究課題/領域番号 |
24500913
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研究機関 | 園田学園女子大学 |
研究代表者 |
野呂 千鶴子 園田学園女子大学, 健康科学部, 教授 (20453079)
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研究分担者 |
中村 陽子 園田学園女子大学, 健康科学部, 教授 (00341040)
日比野 直子 岐阜県立看護大学, 看護学部, 講師 (30340227)
城 仁士 神戸大学大学院, 人間発達環境学研究科, 教授 (40145214)
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キーワード | 災害復興 / 医療過疎地域 / 住み慣れた地域 / 高齢者 / 主体的な生の全う / 生活環境条件 |
研究概要 |
本研究は,災害被災地である高齢化が深刻な過疎地域住民の住み慣れた地域での生の全うをめざす災害復興支援生活環境モデルの提言を行うものである。対象地域は,平成23年9月の豪雨災害被災地である紀伊半島南部であり、モデル地域は、京都府中丹地域の豪雨や豪雪災害被災地にある福祉施設周辺部である。平成25年度は、対象地域およびモデル地域の住民代表、自治会長、過疎地域保健・医療・福祉に従事する医師、看護師、保健師、社会福祉士、社会福祉関係施設管理者を対象にインタビュー調査を行った。インタビュー項目は、災害が住民の健康や生活に及ぼした影響や防災・減災への思い、高齢化の進展と集落機能の維持に関する思い等であり、半構成的面接法を用いた。分析は質的データ分析法を用いてカテゴリー分類し、概念化を図った。現在分析中であるが、26年度開催の日本公衆衛生学会および日本看護科学学会において研究発表の予定である。また、モデル地域で開催された地域ぐるみの交流イベントにおいて参加観察を行った。 現在までに、対象地域の自治会長、住民代表、医療・福祉関係者7人のインタビュー調査の分析およびコミュニティ・アズ・パートナーモデルを用いた地域診断の結果から、『災害復興支援者がとらえる過疎地域の高齢者が主体的に生を全うするための生活環境条件』として、以下の5つを抽出した。 1)災害時の減災に向けた整備:自分のことは自分で守るという意識の醸成、情報管理 2)住民の交流を深め、コミュニティ内の関係性を高める 3)認知症予防と認知症に関する理解を高める教育 4)病診連携・看看連携の強化 5)過疎地域住民が持つ価値観・観念を理解し、生活を支援する専門職の質の向上を図る これらの条件整備には、過疎地域の特性を理解した支援活動が求められ、さらに住民の意向を調査しながら、課題解決に向けた地域力を高める方策について検討したいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は、京都府中丹地域で選定した2カ所のモデル地域での研究活動を本格的に開始し、対象地域である紀伊半島南部の活動とあわせて、災害復興とともに高齢者を支援する立場にある住民代表および保健・医療・福祉関係者にインタビュー調査を実施することができた。また、モデル地域での地域の活性化をめざした自治会と福祉施設が合同で開催しているイベントに参加し、高齢化の進展する地域の次世代に向けた取組みを参加観察することができた。これらの結果の分析も順調に進んでいる。研究の報告は、25年度中に4題学会発表を終えている。 当初は、住民への意識調査も予定していたが、研究者間のディスカッションの結果、災害等により住み慣れた地域から離れることを余議なくされる高齢者をいかに支援するか、関係者のそれぞれの取組みに焦点をあて、質的分析によりベストプラクティスを選定し、生活環境モデルの提言に向けて活動展開するよう研究方針を明確にした。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、本研究の最終年度である。 1 災害復興過程における高齢者を取り巻く生活環境の変化、変化に対応するための住民・自治会、保健・医療・福祉従事者が行っている支援について、引き続き対象地域およびモデル地域においてアクションリサーチし、主体的な高齢者の「生の全う」をめざす災害復興支援生活環境モデルの試案を作成する(全員、特に対象地域:野呂・日比野、モデル地域:野呂・城)。 2 主体的な高齢者の「生の全う」をめざす災害復興支援生活環境モデルに対するディスカッション:対象地域およびモデル地域において、主体的な高齢者の生の全うを支援する関係者に対して、作成した生活環境モデルについて説明し、ディスカッションを行う(対象地域:野呂・日比野、モデル地域:野呂・城)。その結果により修正を加える(全員)。 3 今年度は東日本大震災被災地であり医療過疎である地域の住民・自治会、保健・医療・福祉従事者が行っている災害復興過程における高齢者支援の現状を調査する(野呂・連携研究者)。さらに、この地域においても作成中の主体的な高齢者の「生の全う」をめざす災害復興支援生活環境モデルについてのディスカッションを行い、モデル提言に向けて整理する。 4 主体的な高齢者の「生の全う」をめざす災害復興支援生活環境モデルの提言を行う(全員)。
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次年度の研究費の使用計画 |
現地調査の回数が予定より少なかったことと、1回あたりの調査同行研究者数が予定より少なかったことにより、次年度使用額が発生した。 次年度は最終年度にあたり、対象地域およびモデル地域において、インタビュー調査を含めたアクションリサーチの継続および生活環境モデル仮提案・修正・提言を行う予定である。 そのため、25年度からの繰越額を含めて、効率よく研究活動が行い成果を出せるように有効活用する予定である。具体的に「次年度使用額」は調査旅費に充てる予定である。
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