平成26年度は、25年度に引き続き熊本県玉名市の調査を継続し、生活支援の先進的事例として釧路と沖縄で訪問調査を行った。玉名市では24年度、25年度の研究で見出した支援体制構築に必要なプロジェクトマネジメントの要素を「生活安心ネットワーク委員会」にフィードバックしてモデルの修正を行った。その結果、生活資源へのアクセス不全状態に対して、このような協働的支援体制の構築が有効であることを確認した。本研究で見出した相談・支援体制の構築に必要なプログラムは、熊本県玉東町、相良村の自治体でモデル試行を継続中である。年間5回開催された玉名市「生活安心ネットワーク委員会」には研究協力者の川﨑孝明尚絅大学短期大学准教授と共に助言者として委員会の運営向上に協力した。 本研究結果は、日本家政学会や日本消費者教育学会で発表し、論文にまとめた。本研究遂行中に生活困難について学会や社会での認識が高まり、とくに日本家政学会誌では、時期にかなった意義ある論文との評価を得た。また、自治体職員及び外郭団体職員を対象にした「多重債務・生活困窮者支援のための「家計管理支援相談員」人材育成講座」の企画および講師として還元した。3年間の研究期間を通して、熊本県における生活困窮者支援のためのライフスキルアップ研究会での講座担当や、シンポジウムを通して結果を広く社会に還元した。 現在モデルプラン試行中であるが、生活再建には金をやるだけでは解決せず、生活全体を見守る支援が必要であり、とくに家計管理支援、生活技術の習得支援、福祉的アプローチが不可欠で、これらに関する支援の具体的ノウハウが分からないという新たな課題を見出した。今後は、この残された課題を明らかにし、真に有用な生活再建支援モデルを提示することで、地方消費者行政の充実・強化と生活困難者支援に役に立ちたいと考えている。
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