研究課題/領域番号 |
24500921
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小島 一恭 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (60361391)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | センサーネットワーク / 空気調和 / 温熱的快適性 / 省エネ / 計測制御 / 環境計測 / 生体情報計測 |
研究概要 |
本研究では,住環境において温熱的快適度を維持しつつエネルギー消費を低減するための新たな空調制御方法について,その効果を実環境における被験者を通じた実験により検証する.従来研究(科研費基盤研究(C)20500664)では,住環境の温熱特性および居住者の温熱的快適指標の予測方法を発展させ,温熱環境での個別の居住者の温熱的快適感と温熱環境に対する要求を推定する方法を研究開発し,実験室レベルでの検証を実施してきた.本研究では,実験範囲を実環境へと拡げる.実環境において,ネットワーク上の不特定多数のセンサ情報を選択的に使用し,その選択状況を動的に切り替えながら空調装置の運転時にオンラインで住環境と複数居住者の温熱特性をモデル化する.このモデルに基づき居住者の要求に応じた最小限の空調を行うことで居住者の要求を達成しつつ空調の省力化を図る.この実現のため,(1)複数居住者の温熱環境に対する要求の抽出方法を検討し,とそのための装置および環境を整備する.また,(2)複数センサと複数居住者からなる環境のモデル化手法,(3)複数居住者の温熱環境に対する要求の予測方法,(4)予測された要求のフィードバック方法ならびに空調制御方法を新たに開発し,実環境における被験者を用いた実験で複数居住者の温熱環境に対する要求の達成と空調の省力化の効果を工学的,医学的な見地から検討する. 本年度は,上述の課題に対し,主として実験環境の整備を実施した.従来の実験環境に加え,センサの種類,数を増やすとともに居住者からの申告をより抽出しやすいようにした.また,研究の最終段階で比較するために通常運転モードにおける環境計測,生体情報計測を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)複数居住者の温熱環境に対する要求の抽出方法とそのための装置の開発:住環境における複数の居住者の個別の温熱環境に対する要求を自動的に抽出する方法について検討し,要求を自動抽出するためのハードウェアを新たに開発した.また,従来研究において開発した要求抽出ソフトに加え,更に卓上の操作ボタン,無線式小型携帯端末,空調装置の操作パネルの操作履歴などを併用して居住者の要求を抽出し,様々な状況において複数居住者の快適感,温冷感,温熱環境に対する要求を申告可能なマルチモーダルな抽出装置を開発した. (2)生体情報計測方法の検討ならびに計測システムの構築:本研究では従来研究において実施してきた環境情報計測に加え,脳波計,心電計,パルスオキシメータ,人体動作計測装置等を使用して生体情報(体温(複数点),心拍数,血中酸素濃度,動作(加速度)など)を計測する.本年度はそのための生体情報計測方法の検討ならびに計測システムを一部構築した. (3)大規模センサネットワークの構築と実環境への設置:住環境内の環境情報の測定規模を大幅に拡大するため無線通信(IEEE802.15.4, ZigBee)を用いた超多チャンネル・センサネットワークを構築する予定であったが完成に至っていない. (4)複数センサと複数居住者からなる環境のモデル化手法の検討:ネットワーク上の不特定多数のセンサ群から選択されたセンサを用いて,空調装置の稼動時に動的に温熱環境モデルを構築する方法について検討した. (5)通常運転モードにおけるエネルギー消費および居住者の快適感,温冷感,要求の抽出:研究後半での省エネ効果測定を鑑み,対象となる温熱環境において通常の空調制御を行った場合のエネルギー消費量および居住者の温熱的快適感,温冷感,温熱環境に対する要求を抽出するための検討を行った.
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降は前年度に引き続き通常運転モードにおけるエネルギー消費の測定を行うとともに,初年度に開発した大規模センサネットワークを用いて環境情報,生体情報の計測を行う.また,ネットワーク上の不特定多数のセンサ情報と居住者の要求とを関連づけるための検討を行い,その後,居住者の要求と関連づけられたセンサ群から居住者の温熱環境に対する要求を予測し,空調制御にフィードバックしてその省エネ効果を検討する.具体的な項目は,(1)通常運転モードにおける実験の継続,(2)外部機器より制御可能な空調システムの開発,(3)複数居住者の温熱環境に対する要求の予測方法の検討,(4)生体情報と環境情報の関係性,生体情報と快適感,温冷感,要求の関係性の検討,(5)居住者の要求に応じた新たな運転モードによる効果の確認実験である.(1)では,本研究での省エネ性・快適性の効果測定のため,空調装置を通常モードで運転し,環境計測ならびに生体情報計測を実施する.(2)は本研究で得られた知見を元にフィードバック制御を行う準備として空調装置に改造を加え,外部機器より制御可能にする.(3)および(4)は環境計測,生体情報計測により得られたセンサ情報と居住者の快適度や要求をどのように関連付け,それらのセンサに基づいてどのように居住者の快適度や要求を予測するのかについて検討する.(5)は本研究により得られた方法で空調制御を行い効果を測定する.研究成果については適時,国内外の学会,会議等にて公開する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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