本研究では,住環境において温熱的快適度を維持しつつエネルギー消費を低減するための新たな空調制御方法について,その効果を実環境における被験者を通じた実験により検証した.従来研究(科研費基盤研究(C)20500664)では,住環境の温熱特性および居住者の温熱的快適指標の予測方法を発展させ,温熱環境での個別の居住者の温熱的快適感と温熱環境に対する要求を推定する方法を研究開発し,実験室レベルでの検証を実施してきた.本研究では,実験範囲を実環境へと拡げ、実環境において,ネットワーク上の不特定多数のセンサ情報を選択的に使用し,その選択状況を動的に切り替えながら空調装置の運転時にオンラインで住環境と複数居住者の温熱特性をモデル化する手法について検討した.昨年度までに実験環境の整備を実施し,従来の実験環境に加え,センサの種類,数を増やすとともに居住者からの申告を小型携帯端末などを使用することにで,より抽出しやすくした.また,センサ情報の欠落による不具合に対応した.本年度は昨年度に引き続き長期間の環境情報ならびに居住者の温冷感申告の取得するとともに,モデル化手法を再検討し,センサ情報の欠落や増減に依存せずに居住者の快適感や温冷感を予測する方法を確立した.その上で,参照するセンサ情報としてインターネット上に公開された温湿度や天候などの情報を付加し,それでもなお本手法による温冷感,快適感の予測が可能であることを確認した.
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