研究課題/領域番号 |
24500922
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
鳴海 多恵子 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (90014836)
|
キーワード | 手指の巧緻性 / 幼児 / 幼稚園 / 学年差 / 男女差 / ビーズ通し |
研究概要 |
本年度は、幼児の手指の巧緻性の発達様相を縦断的に明らかにすることを目的として、前年度と同一の幼稚園に在籍する園児を対象に計測および計測結果の分析を行った。計測対象数は年少(3才)児学年44名、年中(4才)学年45名、年長(5才)学年47名である。年少および年長学年は2年目の継続計測となる。計測方法は昨年と同様の4項目、すなわち①折り紙を四角に折る(時間と頂点のズレ量)、②マグネット移し(速さ)、③ひもを解く、結ぶ(速さ)、④ビーズ通し(数)である。結果の概要は以下の通りである。 1.学年間の横断的分析において、昨年と同様、折り紙の項目以外は、学年進行とともに成績が上昇した。折り紙の項目は、年少学年で概ね完成するものと推測される。学年進行における成績上昇傾向には男女差が見られ、男児では年少学年と年中学年間には差が少なく、有意な差が見られないのに対し、女児では年少学年と年中学年間の差が大きく、次の学年との差が少なかったことから、手指の巧緻性に関しては、女児の方が発達が早いことが示唆されたと考える。 2.年中学年児と年長学年児における前年度の計測結果との比較から発達様相を縦断的に分析した結果、各学年においてすべての項目の成績において有意に向上したことが確認された。さらに、成績の上位群と下位群を各学年男女別に5名づつ抽出し、個別の発達様相を分析した結果、ビーズ通し以外の項目において、上位群と下位群の差が縮小することが確認された。1年間の幼稚園生活において共通の経験をすることによる効果が推測された。ただし、ビーズ通しにおいては双方の群の差は縮まらないままそれぞれが上昇することが確認された。この項目は特に高い巧緻性を要する作業であり「糸結びテスト」を用いた研究成果との関連性が高い項目であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象とした幼稚園の全面的協力が得られていること、また、これまでの研究にはみらられなかった個別の縦断的調査結果が得られていることから、本研究の成果は貴重なものとなると考える。 また、前年度の研究成果から課題としてあげられた「糸結びテスト」を用いた小学校以上の研究結果との相違点について、今年度の研究データから解決の目処が見えてきている。 このことから幼児の手指の巧緻性の調査方法に対する大きな示唆が得られていると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は3年目の継続調査を実施する予定である。これによって幼稚園生活3年間における個別の手指の巧緻性の発達様相をとらえ、分析することができる。 なお、本研究では幼児の手指の巧緻性の発達は幼稚園生活の経験の関与が大きいと考えているが、そのことを実証するためには保育方針が異なる幼稚園等における調査データの分析も必要と考えている。今後の取り組み課題と考える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は調査活動が予定よりもかなり順調に進んだため、人件費および謝金の支出が少なくなった。 次年度は、調査活動のほか、北欧における幼稚園の集団生活の保育環境および手指の巧緻性を促す遊びの実態と保育内容に関する研修を実施する予定である。従って、調査に要する人件費、謝金、その他経費および旅費として主に使用する予定である。
|