研究課題/領域番号 |
24500925
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
深沢 太香子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90423574)
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研究分担者 |
栃原 裕 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 研究員 (50095907)
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キーワード | 乳児 / 温熱環境 / 蒸散 / 発汗 |
研究概要 |
乳児体表からの液相発汗を模擬する装置を製作した.液相の発汗量は,文献調査結果に基づいて,全身の蒸散量以上である15 g/m2hから80 g/m2hとし,本年度に導入した精密電子天秤を用いて,本装置中の模擬皮膚からの蒸発量を測定した.その結果,拍出した汗の殆どが模擬皮膚表面より短時間で蒸発し,さらに,模擬皮膚への供給熱量が乳児の熱産生量とほぼ同程度かつ,その表面温度が33 °C 程度を示したのは,本研究で設定した液相発汗量の範囲中,15 g/m2hから30 g/m2h程度の発汗量の場合であった.これより,本研究で製作した装置は,15 g/m2hから30 g/m2h程度の液相発汗量の範囲において,潜熱移動よりも顕熱移動に依存する乳児人体からの放熱現象の特徴を再現できることが確認された.他方,液相発汗量が40 g/m2hから80 g/m2hの場合,拍出した汗が模擬皮膚表面から短時間で蒸発するには,乳児の安静時代謝量以上の供給熱量を要する結果となった. 次に,乳児の不感蒸散を模擬する装置を試作した.作製にあたり,表皮内側にある角質層からの水分(汗)蒸発を再現するためには,模擬皮膚内部で水分が蒸散しなければならないことに留意した.模擬皮膚下部には,文献調査に基づいて,乳児の不感蒸散量として,10 g/m2h の水分を供給することとした.装置の重量測定より,模擬皮膚下部への水分供給量とほぼ同量の重量減少が生じていること,さらに,模擬皮膚表面は乾燥状態にあることが確認された.これらより,作製した気相発汗模擬装置は,不感蒸散の現象を再現していることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乳児の体表からの蒸散と発汗を再現した気相,液相発汗模擬装置を,ほぼ研究計画とおりに,各々作製することができた.
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今後の研究の推進方策 |
乳児の気相発汗模擬装置による再現性を熱伝達性の観点から評価するとともに,気相・液相の両方を再現する装置を作製する.研究成果について,関連の国内外学会にて発表する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に導入した電子天秤は海外製品である.導入した時期は,円高であったため,計画時よりも低下価格にて入手することができた.また,装置作製にあたり,設計図および指示書を研究代表者が作製したことによって,加工に掛かる費用を低減することができた. 乳児における気相・液相の両発汗を再現する装置を作製するために,その構築材や加工費用として使用する.研究成果の一部を海外で開催される国際会議にて発表して,海外の生理学者や機械工学の研究者から,本研究への助言を得る等,意見を収集する.そして,それらを踏まえて再現性の高い装置の改良・改善を行う.
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