平成27年度は、第3回調査(平成26年春季実施、2都市)および第4回調査(平成26年夏季実施、3都市)についての調査結果をまとめ、報告を行った。(昭和女子大学 学苑 第897号) 本研究においては第1回第2回の調査と合わせ計4回の海外調査で224の事例データを得ることができた。平面形態では,第1回第2回の調査を終えた段階で,通路状のもの,中庭空間を伴うもの,複数の中庭空間が連続するもの,途中分岐を伴うもの,そしてこれらが複合した形をもつもの,と多様なバリエーションが確認されていた。第3回第4回の調査でも様々な平面形態が見られたが,大きくは中庭空間と細長い通路状の空間に分類することができる。中庭空間はバルセロナとライデンでの多くの事例が該当するが,2都市ではその様相が全く異る。バルセロナでは,都市計画によって整備された規模の大きい公園的な中庭空間が形成されており,それらはいずれも周囲の建築物とは関連しない独立した空間とであった。一方のライデンは,手入れされた植栽や住戸入口まわりに置かれた屋外家具,駐輪スペースや井戸など共用設備が配置され,中庭空間が周囲の住宅のための共用空間であった。またヴェネツィアでは,中庭空間と通路状の空間の双方が観察された。中庭空間はライデン同様,周囲の住宅のための空間であることが多いが,住宅の入口が囲む中庭空間でもライデンのように空間全体を装飾する植栽や共用設備は無かった。 今後はこうした平面形態から読み取れることと,中庭空間の事例に見られるような,平面だけでは記述できない要素の組み合わせを加味し全4回の調査事例を精査し,空間分析を行っていきたい。 またこれら全4回の調査結果について、webサイトにまとめ公開したことも平成27年度の成果である。(「都市街区における路地空間の利用」http://gaiku-roji.com/)
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