研究課題/領域番号 |
24500935
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
榎本 一郎 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 多摩テクノプラザ繊維・化学グループ, 主任研究員 (10462970)
|
研究分担者 |
中村 勲 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部城南支所技術支援係, 副主任研究員 (20420953)
添田 心 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部墨田支所技術支援係, 主任研究員 (60462975)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 染色加工 / 繊維化学 / 表面処理 |
研究概要 |
本研究は、これまで染色が困難であった超高分子量ポリエチレン繊維に染料と結合する部位を持つ薬剤を固定化させて、染色性を向上させることを目的としている。ポリエチレンは-(-CH2-CH2-)n-の炭化水素で構成されており、染料と結合するために必要なカルボキシル基(-COOH)やスルホン酸基(-SO3H)等の染着座席を持っていない。そこで本研究では、プラズマ処理及び放射線グラフト重合によりこれら染着座席を持つ薬剤の固定化を行った。初年度はプラズマ処理を中心とし、染着座席を持つ薬剤としてビニルスルホン酸(VSA)とポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)混合物の10%メタノール溶液を使用した。プラズマ処理は出力25W、周波数13.56MHzの装置を用い、処理時間及び雰囲気ガスを変えて行った。CF4ガス中でポリエチレンを予めプラズマ処理した試料で良い結果を示した。CF4ガス中での前処理後、試料を混合溶液に浸して、75℃、0.2MPaの条件で24時間処理した後、更に酸素プラズマ処理により薬剤のポリエチレンへの固定化を図った。ポリエチレンへの薬剤の固定化はFT-IR及びXPSにより確認した。FT-IRから、1100cm-1及び1725cm-1に、PEGDA由来の-C-Oや-C=Oの存在が確認できた。同様にXPSから、287eV及び289eV付近に-C-Oや-C=Oの存在を確認している。一方、FT-IRからのVSAの確認は微量なため正確な確認は困難であるが、XPSから163.8eVのS2P軌道が観察できたことから、VSAの固定化が確認できた。しかし薬剤の固定化量が限定的であるため、染料による染色で濃色には至っていない。今後、薬剤の固定化量を増加させることができる処理条件及び放射線グラフト重合について進展させて行く。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の研究計画の主体であるプラズマ処理装置の導入が10月にずれ込んだため、全体の進捗が予定よりやや遅れている。しかし過去の知見もあり、その後の薬剤の配合が順調であり想定した結果に近づいている。最終的な確認ができていないため、研究実績に報告していないが、電子顕微鏡による観察ではポリエチレンへの薬剤の固定化が画像で確認できることから、かなりの量の薬剤が固定化していると考えられる。今後、他の処理方法も含めて固定化量の増加を図っていく計画である。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度は、プラズマ処理を中心に繊維基質に染着座席を導入して固定化することを最優先とした。今後は放射線グラフト重合も詳細に検討し、分析機器を使用して固定化のメカニズムを詳細に解明する。繊維と染着座席を持つ薬剤との結合状態を解明することにより、薬剤の保持力あるいは染色堅ろう性との関係が明らかになる。ここでは複数の表面分析手法を用いることで、複雑に結合した状態を解明していく計画である。特に、赤外分光法(FT-IR)やX線光電子分光法(XPS)は結合状態の解明に重要な役割を担う。また13C固体核磁気共鳴(NMR)による解析は、試料内部の状態を把握できる。これらの解析により、固定化された薬剤が繊維表面に分布するのか、内面まで均一に分布しているのかを明らかにする。薬剤分布の位置は染色性に影響するため、薬剤の結合位置と染色の堅ろう性との相関を詳細に調べる。導入した染着座席のタイプに応じて、カチオン染料、反応染料等で染色し、染色堅ろう度試験で染色物の評価を行う。染色堅ろう度は染色濃度によって異なるため、表面染着濃度を測色機で測定し、濃色、中色、淡色に分けて評価を行う。更に構造解析の結果を受けて、より効率的な処理条件を設定できるので、ボビンに巻いた状態の大量の繊維の処理を行う計画である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|