研究課題/領域番号 |
24500936
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立自然史博物館 |
研究代表者 |
濱田 信夫 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (40270764)
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研究分担者 |
阿部 仁一郎 大阪市立環境科学研究所, その他部局等, 研究員 (10321936)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 住環境 / カビ / 水回り / 界面活性剤 / 食洗機 |
研究概要 |
住環境の水周りに特異的に見られる界面活性剤を好むカビを材料にして、住環境のカビのルーツを探り、そのカビがなぜ、住環境で優占することになったかを解明する研究に取り組んでいる。これまでに、界面活性剤を好むカビは、どのような野外環境に元々生育していたかについて取り組んできた。その中で、アルカリ土壌がそのルーツの可能性が高いことが分かってきた。 そこで、伊吹山の石灰岩帯の土壌のカビの菌相には注目し、界面活性利用性の解明を行った。また、関西では若草山の山焼きの他、琵琶湖や淀川沿いでは葦焼きが行われるが、この後の灰は、広範囲のアルカリ性土壌を生み出す。それらの土壌と一般の土壌との菌相の比較を行った。さらに、瀬戸内海の井島で山火事が2011年夏に発生したが、その土壌や灰のカビの菌相についても調べた。 もう一つは、界面活性剤の影響を受ける水周りであり、高温の影響を強く受けている食器洗浄機の内部の菌相について調査を行った。食器洗浄機は、42℃程度の温水を使う浴室より高温で、65℃の高温水を使う環境である。そこではカビは生えにくいと思われるが、40℃でも生育するExophiala dermatitidisという真菌症の原因菌が、優占していることが分かった。現在のこの種の種内変異と、野外で認められた株、さらに人体から分離された株について遺伝的な相同性のほかに、その生理・生態的な特性を調べている。そして、なぜ、食洗機でE. dermatitidisが優占するようになったかを解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アルカリ土壌中の菌相を調べる場合、どの程度カビが胞子を形成しているかは大きな心配点だった。なぜなら、胞子がなければ種の同定が困難だからだ。しかし、実際にカビの採集や培養を行っていくと、それは杞憂だったことがわかった。多くは胞子を形成し、種の同定を行うことができ、順調に菌相の同定ができている。 また、室内の高温水回り環境として、食洗機の菌相の解明も行った。その結果わかったことだが、E. dermatitidisという、ユニークなカビが優占していることは、まず興味深い事実だ。この生理・生態的な性質を解明し、他の水回りのカビと比較するのは、本プロジェクトの達成に大いに貢献し、申請者にとっても胸躍る作業である。
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今後の研究の推進方策 |
石灰岩帯の土壌の菌相の比較をさらに行いたい。石灰岩帯としては、伊吹山のほかに、滋賀県の湖南アルプスなどを予定している。なお、若草山の他、琵琶湖や淀川沿いでは、西湖や高槻市鵜殿などのカビの菌相について前年と同じ結果が出るかまず確認したい。なお、一般の川原の土壌の菌との比較もさらに行いたい。また、瀬戸内海の井島については、その土壌や灰の菌相の経時的な変化をさらに調べる予定である。分離された株については、類似種や同種のカビと生理的、遺伝的関連を調べる予定だ。 食洗機では、E. dermatitidisの他、E. jeanselmeiとP. herbarumなどの好温性カビも同様にが認められ、37℃でも生育することが確かめられた。また、この2種も界面活性剤を利用する能力のある。これらのカビの中で、なぜ、E. dermatitidisが優占するようになったかを解析している。Exophiala属のカビは多くの遺伝的データもそろっており、かつ登録されている株も多いので、分離株と既知の株について、25年度には詳細な比較ができると考えている。 24年度に行った各株の生理的、遺伝的特性の解明に続いて、それらのデータを総合的に体系化する作業を行いたい。各種の得られたサンプルについて、前述したリボソームRNA遺伝子など多変異領域の塩基配列について比較し、各株の分子系統的な類縁関係を解明したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
まずは実験に必要な世界各地の野外のカビの菌株をNITEなどから手に入れる。さらには、培養用の培地を購入する予定だ。その経費として消耗品代を予算化する予定である。さらに、サンプルの採取のために、4回ほどの調査旅行を計画している。また、それらの結果を公表すべく、学会発表を行う予定である。それらの旅費も計上する予定である。
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