食文化の継承・発展の面で期待できる伝統文化の一つとして,和菓子が挙げられる。 和菓子は長い歴史の中で多様な製菓材料・製菓技術を総合させて完成されたもので,日本人独特の情感や季節感を盛り込み,菓銘をもった,世界に例のない精巧な菓子である。しかし,食生活の洋風化により,和菓子の喫食頻度は,特に若い世代において減少傾向にある。また,地方都市においては,人口減少と高齢化に伴い,和菓子の需要は縮小傾向にあるなど,食文化継承の面で懸念すべき状況にある。 本研究室においては,和菓子の嗜好性や学習状況について研究を行っている。その中で,大学生における和菓子の嗜好性は低くないものの喫食経験が少ないこと,また,幼児を対象にした調査より,年少の段階から和菓子に触れることにより,和菓子の嗜好性が高まるという結果が得られている。しかし,幼稚園児から大学生に至るまでの成長過程における和菓子の嗜好性や意識に関しては不明な点が多い。 そこで,本研究では,まず,中学生を対象として和菓子に対する嗜好性や喫食頻度について検討した。中学生を対象とした理由として,まず,中学生の生活のあり方が幼児や大学生とは異なることが挙げられる。 また,和菓子は製法や材料により,多様な種類が存在する。そのため,各年代に応じた和菓子の認知度や利用状況など詳細に把握することにより,実態に応じたより効果的な食育が可能となると思われる。そこで同じ対象者について,各種和菓子の認知度や食経験を検討した。さらに,高等学校生についても同様の調査を行った。 発達段階にある中学生および高等学校生の和菓子に対する意識や実態を把握するとともに,先に行った大学生の結果と比較することで,異なる年代間の共通点や相違点を見出すことができる。これにより,成長段階に合わせた食文化の教育の在り方を探り,文化・伝統継承に関する食育教材開発の一助とした。
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