日本の伝統的な食事の栄養価や嗜好性を明らかにして伝承につなげるために調査および分析を行うとともに、食育プログラムを作成して実践した。 まず、滋賀県内の伝統的な生活様式と食事に関する聞き取り調査、若者の伝統食に対する嗜好性についての調査を行った。 次に、滋賀県の伝統野菜の栄養価と機能性に関わる分析、物性測定、官能評価を行い、伝統野菜の価値と嗜好性を整理した。伝統野菜の中にはビタミンCやポリフェノールを豊富に含む品種があり、アスコルビン酸量およびポリフェノール量と抗酸化性には相関が認められた。伝統野菜には、栄養面だけでなく機能性面からも価値がある品種があり、伝承を進めるべきであると判断した。 一方、滋賀の伝統食であるふなずしと菜の花の漬物について成分分析と官能評価を実施し、伝統的な加工方法が生み出す保存性と独特の風味について考察するとともに、今後の伝承に向けての取り組みについても調査した。ふなずしの場合、官能評価における総合評価と「味の良さ」、「摂食中のにおいの好み」、「摂食前のにおいの好み」の間には正の相関が認められ、味やにおいが総合評価に大きく影響することも明らかにした。 最後に、学校現場で実践されたこれまでの食農教育活動を整理し、農産物直売所の実態調査、子育て世代の食意識に関する調査を実施した。その結果、農産物直売所ごとに特徴のあるコミュニティーができているケースが認められ、そのコミュニティーは、これからの食育活動の拠点になりうると判断した。子育て世代が、食文化や地産地消についての情報を得たいと考えている実態も明らかになり、地域での食育活動の場として農産物直売所を利用できる可能性があった。学校教育においても農産物を栽培する活動を組み入れた食育が効果的ではないかと考え、小学校生活科で実施する栽培、収穫、調理、試食を連続して実施する食育プログラムを作成し、実践した。
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