研究課題/領域番号 |
24500944
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
井奥 加奈 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (40243282)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 野菜類 / テクスチャー / フレーバーリリース |
研究概要 |
本年度は食品物性測定装置(クリープメータ、山電RE-3305B)を新規導入し、食品のテクスチャー測定に関するプロトコルの確立と、野菜のテクスチャー測定、モデルゲルの調製、ならびにモデル咀嚼によるフレーバーリリースについて、ゲルの調製と実験方法を検討した。 1: 野菜のテクスチャー測定 果菜、根菜、葉菜など、野菜として食べる部位はまちまちであるから、野菜のテクスチャーも実際には野菜によって、また、同じ野菜でも調理によってテクスチャーは異なる。そこで、野菜のテクスチャーを整理する目的で加熱して摂取する野菜に着目し、代表的な加熱野菜20種(グリーンアスパラガス、かぼちゃ、にがうり、ごぼう、さつまいも、さといも、じゃがいも、ズッキーニ、だいこん、とうがん、にんじん、にんにく、らっかせい、れんこん、えだまめ、かぶ、くわい、きゅうり、なす、ながいも:表記は「食品成分表2011」に準拠)を選出した。各野菜試料の10mm立方体を調製し、試料重量の2-5倍の純水で調理した後、試料のテクスチャーをクリープメータで測定した。得られた特性値と水分含有量を多変量解析にて解析した。その結果、今回用いた野菜のテクスチャーは3種類に分類できた。 2: モデルゲルの調製と咀嚼によるフレーバーリリースの検討 加工食品などの濃い味に慣れていると、野菜に含まれる微量の糖類に対する嗜好性は低い可能性も考えられた。そこで、野菜に含まれる微量の糖類に対する嗜好性を検討するため、10%コーンスターチゲルにショ糖を10%添加し、咀嚼をプランジャの上下運動に置き換えて、水中のゲルに対するプランジャの上下運動によるショ糖の溶出量を高速液体クロマトグラフィーにより定量した。コーンスターチゲルの大きさは20mmの立方体で、キューブアイス調製ラックを活用した。その結果、咀嚼回数10回で添加ショ糖量の10~15%が水に溶出することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クリープメータは新規導入であり、微量な糖含有量の定量のために合わせて高速液体クロマトグラフィー用示差屈折検出器を導入したが、これは12月中旬であった。本研究室では糖分析に関するプロトコルがなく、糖分析に関してはプロトコルを確立した。さらに、テクスチャーの測定プロトコルを確立して野菜のテクスチャーを測定し、また、モデルゲルの調製とフレーバーリリースを含めた咀嚼モデル実験プロトコルを作成したことから、少なくとも実験プロトコルを確立し、それなりにデータがとれるようになった点で、遅れている状況ではないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)加熱野菜のテクスチャーにおける分類の再現性確認と、テクスチャー用語との関連 前年度加熱野菜のテクスチャーを3群に分けたので、まず、その群分けの再現性について検討し、それぞれのグループに適したテクスチャー用語の有無について検討する。季節差や品種差についても検討する予定である。テクスチャー用語の選択は主観的であるが、味覚教育の指導時にはある程度提示することが望ましい。その際の官能評価のスケールについても検討したい。一連の研究は、味覚教育を学校で実践する場合のガイドライン作成の基礎資料として有用であると考える。 2)野菜の成分含有量、もしくは、テクスチャーに合わせたモデルゲルの調製 野菜のおいしさに影響を及ぼす成分は、糖と遊離アミノ酸、機能製成分であると考える。糖に関しては、加工食品や菓子類など糖度の高い食品に慣れていると、野菜に含まれる微量な甘味をテクスチャーとともに味わうのは困難である可能性が高く、モデルゲルを活用したトレーニングも必要と考える。そこで、野菜の甘味に合わせたモデルゲルを調製し、糖類のリリースに関する基礎データを蓄積するとともに消費者パネルとして大学生に協力してもらって、上記1)での甘味の感じ方との関連についても検討する。遊離アミノ酸に関しては高速液体クロマトグラフィーを用いた分析を確立し、野菜に含まれるアミノ酸、特にグルタミン酸の含有量が味覚に及ぼす影響について検討する。機能性成分は本研究室でのプロトコルが確立した成分であり、嫌な味を呈する場合が多い。これに関しては食べた時の美味しさに影響を及ぼすかどうかを明らかにしなければならない。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は実験用カラムと溶媒、および実験用試薬など、消耗品の購入に研究費を使用する予定である。
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