研究課題/領域番号 |
24500945
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
岡崎 勝一郎 香川大学, 農学部, 教授 (60109733)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 食品 / 免疫学 / 糖鎖 / アレルギー・喘息 |
研究概要 |
食品増粘素材として多用されている多糖であるキサンタンガムの新たな健康機能を明らかにして食生活上の有益性を確立することを目的に免疫賦活化能を検討した。 マウスマクロファージ培養細胞株J774.1をキサンタンガム多糖(50μg/ml)、マクロファージ上のトール様受容体(TLR)-4を介して活性化することが知られている大腸菌リポ多糖(LPS、0.1μg/ml)あるいはTLR-2を介して活性化する植物性乳酸菌加熱死菌菌体懸濁液(10μg/ml)存在下で24時間培養して、培養上清中の活性化の指標となるサイトカインであるインターロイキン(IL)-12の産生増強を酵素免疫測定法で定量した結果、すべての試料においてIL-12の産生増強が認められた。 LPSで刺激したJ774.1細胞にキサンタンガムあるいは乳酸菌を加えると、IL-12産生の相乗効果が乳酸菌には認められたが、本多糖には認められなかった。 マウスから調製した脾臓細胞をキサンタンガム多糖、LPSあるいは乳酸菌存在下で24時間培養後の培養上清中のIL-12 とインターフェロン(IFN)-γの産生増強を定量した。その結果、遺伝的にLPSに対する応答性の高いC3H/HeNとナチュラルキラー細胞はあるがその活性の低下したC57/BL6JHam 系統の脾臓細胞で、すべての試料においてIL-12とIFN-γの産生増強が認められたが、IFN-γの産生はC57/BL6J Ham系統がC3H/HeN系統より低下していた。LPSに対する応答性の低いC3H/HeJ系統の脾臓細胞では、すべての試料においてIL-12の産生増強は認められたが、IFN-γの産生増強は認められなかった。 以上の事から、食品増粘素材多糖であるキサンタンガムには乳酸菌と同様な細胞性免疫賦活化作用があり、マクロファージ細胞上TLR-4を介して活性化していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、食品増粘素材多糖であるキサンタンガムの免疫細胞に与える影響についてマウスのマクロファージ培養細胞株と脾臓細胞を用いて細胞性免疫応答の増強効果とアレルギー応答の抑制効果を、マウス脾臓細胞と腸管上皮様細胞株を用いて抗炎症作用を検討することにより、食品増粘素材多糖の新たな健康機能を明らかにして、食生活上の有益性を確立することを目的としている。24年度はこの目的の中で、マウスのマクロファージ培養細胞株と脾臓細胞を用いて細胞性免疫応答の増強効果を明らかにすることでき、ほぼ期待した結果が得られた。また、マクロファージ細胞上のトール様受容体(TLR)-4を介して活性化していることが示唆された。したがって、「研究の目的」の達成度は、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
・多糖キサンタンガムは、マクロファージ細胞上のトール様受容体(TLR)-4を介して活性化していることが示唆されたが、このことをさらに明確化するため、前年度購入した単一のトール様受容体2あるいは4を発現している遺伝子導入細胞を用いて検討する。 ・マウス脾臓細胞を用いて、アレルギー抑制の指標であるIL-4の産生低下と炎症性の指標であるIL-17の産生増強効果を検討して、多糖キサンタンガムの抗アレルギー効果と好中球による細菌に対する防御効果を明確にする。この試験により抗アレルギー効果を検討することができるので「平成25年度の研究実施計画」に記載したマウス脾臓細胞を用いたキサンタンガム多糖の卵白アレルギー抑制効果試験は変更して行わない。 ・腸管上皮様細胞株Caco-2細胞を用いて腫瘍壊死因子(TNF-α)刺激により起こる腸管のバリア損傷に対する多糖キサンタンガムの抑制効果を検討する。 ・高速液体クロマトグラフィーによる多糖キサンタンガムの分析・定量方法を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度では、多糖キサンタンガムがマクロファージ細胞上のトール様受容体(TLR)-4を介して活性化していることが示唆されたが、購入した単一のトール様受容体2あるいは4を発現している遺伝子導入細胞を用いて検討できなかった。この試験には酵素アルカリフォスフォターゼ活性測定が必要であるので、その測定キット購入のため経費を24年度に使用しないで、25年度に持ち越した。
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