研究課題/領域番号 |
24500945
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
岡崎 勝一郎 香川大学, 農学部, 教授 (60109733)
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キーワード | 食品 / 免疫学 / 糖鎖 / アレルギー・喘息 |
研究概要 |
食品増粘素材として多用されている多糖であるキサンタンガムの新たな健康機能を明らかにして、食生活上の有益性を確立することを目的として、免疫賦活化能を検討した。 キサンタンガム、乳酸菌菌体と大腸菌リポ多糖(LPS)によるマウス脾臓細胞での各種サイトカインの産生を検討した。マウスC3H/HeN(リポ多糖LPSに対する応答性が高い)系の脾臓細胞にキサンタンガム(50μg/ml)、乳酸菌(10μg/ml)あるいはLPS(0.1μg/ml)を添加して、培養3日後の培養上清中の、体液性免疫の指標であるインターロイキン(IL)-4、 ヘルパーT細胞17型が産生するIL-17とその産生細胞を分化・誘導するマクロファージが産生するIL-6、さらに、好中球の浸潤を誘導して細菌の貪食に関与するマクロファージが産生する腫瘍壊死因子(TNF-α)を酵素免疫測定法で定量した。検討したキサンタンガム、 乳酸菌とLPSはすべてIL-6 とTNF-αの産生を増強した。IL-4産生に対しては、キサンタンガム、乳酸菌とLPSは抑制効果が認められた。また、IL-17産生に対しては、キサンタンガムと乳酸菌は産生増強効果を示したが、LPSは産生を抑制した。 IL-4の産生低下はヘルパーT細胞1型と2型の免疫バランスを1型つまり細胞性免疫の増強へと向かわせるので、相対的にアレルギーが抑制される。また、IL-17は、いくつかの自己免疫疾患の発症にも関与するが、健康な状態では好中球の浸潤を誘導し、炎症反応を起こさせ細菌に対する防御反応を行う。 したがって、キサンタンガムは乳酸菌と同様にアレルギー抑制効果と好中球による細菌に対する防御という免疫機能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、食品増粘素材多糖であるキサンタンガムの免疫細胞に与える影響についてマウスのマクロファージ培養細胞株と脾臓細胞を用いて細胞性免疫応答の増強効果とアレルギー応答の抑制効果を、マウス脾臓細胞と腸管上皮様細胞株を用いて抗炎症作用を検討することにより、食品増粘素材多糖の新たな健康機能を明らかにして、食生活上の有益性を確立することを目的としている。25年度はこの目的の中で、マウス脾臓細胞を用いて、アレルギー抑制の指標であるIL-4の産生低下と炎症性の指標であるIL-17の産生増強効果を検討して、キサンタンガム多糖の抗アレルギー効果と好中球による細菌に対する防御効果を明確にできた。したがって、「研究の目的」の達成度は、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.腸管上皮様細胞株Caco-2細胞を用いたキサンタンガム多糖の抗炎症作用 トランスウエル内でヒトCaco-2腸管細胞株を3日ごとに培養液交換を行いながら15日間培養して腸管細胞様に誘導する。キサンタンガムあるいは植物性乳酸菌をあらかじめ作用させたCaco-2細胞を基底膜側からTNF-αで刺激しながら2日培養して炎症状態を誘導する。Caco-2細胞間の密着結合の程度を経上皮電気抵抗値で測定するとともにIL-8産生量を酵素免疫測定法で定量する。 2.高速液体クロマトグラフィーによるキサンタンガムの分析・定量方法の開発 単糖や二糖は分光学的に検出できないので、示差熱検出系が用いられているが、その感度は低い。しかしながら、アミノベンジルエチルエステルで標識すると紫外でも蛍光でも検出できるようになる。酸で部分分解したキサンタンガムの構成単糖や二糖を標識して高感度に分析するとともに、食品や化粧品中のキサンタンガムを分析・定量する。
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次年度の研究費の使用計画 |
多糖キサンタンガムがマクロファージ細胞上のトール様受容体(TLR)-4を介して活性化していることが示唆されたが、25年度では、購入した単一のトール様受容体2あるいは4を発現している遺伝子導入細胞を用いて検討したが、この目的のためにこれらの細胞を使用するには不適であることがわかった。この事をさらに追求する目的で新たな細胞を購入するため26年度に持ち越した。 新たな遺伝子導入細胞の購入
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