2015年度では、昨年装置の故障で中断されたリンゴ貯蔵実験を引き続いて実施した上で、貯蔵に伴うりんごの物理測定値(硬さと脆さ)およびりんごの近赤外スペクトルの変化を調べた。また、りんごの物性測定値と近赤外スペクトルの変化との関連性を検討した結果、りんごの硬さ、弾力とサクサク感に関わる物性測定値が近赤外スペクトルとは密接な関係を示し、両者の間には比較的高い相関が得られ、近赤外分光法による貯蔵りんごの物理的な“味”の分析の可能性を示した。りんごの物理的な“味”の予測モデルの回帰係数を検討したところ、糖や酸等の味成分の主な吸収バンドと違って、750nm、914nmおよび1000nmの波長付近に正のピークがあり、C-HとO-Hの官能基による吸収が確認され、りんご果肉構造に関わるペクチンの吸収によるものである可能性を示した。 さらに、数十種類のりんご試料に対し、テンシプレッサーによる物性測定値を含む理化学分析と近赤外スペクトル測定を行い、りんごの官能評価試験による食味評価値との関連性をケモメトリックスの手法で検討したところ、近赤外スペクトルと理化学分析値のいずれも食味評価値と密接に関係していることが認められた。また、理化学分析値によるものにより、近赤外スペクトルによるりんごのおいしさの予測値のほうが精度高いことが分かった。これは理化学分析値より近赤外スペクトルにはおいしさにとってより多い情報を含まれていると考えられる。
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