研究課題/領域番号 |
24500947
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
吉村 美紀 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (90240358)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 混合ゲル / 大豆たんぱく質 / 米粉 / 物性 / 咀嚼性 |
研究概要 |
タンパク質と澱粉は食品中に多く含まれる高分子成分であり食品ハイドロコロイドとしての役割を担っている.これらは,日常食品の素材,食感改良のための素材から,高齢者用食品,メタボリックシンドロームの予防効果をもつ優れた食品素材へと発展してきている. 本研究では,タンパク質の酸凝固に及ぼす2成分の相互作用について,豆乳と米粉の混合系を用いて,豆乳と米粉濃度の影響について検討を行った.また,油脂添加の物性への影響を検討した. 豆乳・米粉混合は,酢酸無添加では分離を示し,酢酸添加では,pHの変化に伴い,試料の米粉量が多く豆乳濃度が高いほど,ゲル化の傾向が見られた.酢酸量の増加に伴い,強いゲルを形成した.しかし,豆乳濃度に対する酢酸量が少ない場合はゲル化が抑制され,米粉と豆乳濃度に応じて最も強いゲルになる酢酸量は異なることが推察された.焼成後は,全試料において,試料の米粉量が多く豆乳濃度が高いほど,膨らみが増し広がり程度の減少傾向が見られた.米粉中の澱粉の影響を検討した.また,油脂添加による初期の時間依存性では初めゆるやかに上昇し,ある点で急上昇し,またゆるやかに上昇し最終点では,油脂無添加より上昇することが見られた.油脂がゲル化を抑制するが,ある点からゲル化を促進し,その後はゆるやかに進行することが推察された. 豆乳・米粉混合は,米粉と豆乳濃度に適した酸添加でゲルが強くなり,また油脂添加は豆乳・米粉混合ゲルのゲル化速度に影響を及ぼす結果を得た。これらの結果は豆乳の酸ゲルを素材とした場合の米粉と油脂混合による食感改良の結果を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大豆タンパク質と米粉の酸凝固に及ぼす2成分の相互作用について,豆乳(液体)と米粉(粉末)の混合系を用いて,豆乳と米粉濃度の影響について物性検討を行った.また,試料調製において,分離大豆たんぱく質(粉末)と米粉(粉末)での検討も行った. 豆乳の酸ゲルを素材とした場合の米粉と油脂混合による食感改良の結果を得ることができた.豆乳・米粉混合系は,試料の米粉量が多く豆乳濃度が高いほど,ゲル化の傾向が見られ,米粉と豆乳濃度に適した酸添加(pH約5.8)でゲルが強くなった.焼成後は,全試料において,試料の米粉量が多く豆乳濃度が高いほど,膨らみが増したことより,目的の結果を得ることができた.咀嚼実験については,予備実験で生体情報解析プログラムを用い一定の結果を得たが,本実験は平成25年に実施することとした.この点は.計画よりやや遅れている.また,油脂添加の物性への影響についても検討し,油脂添加は豆乳・米粉混合系のゲル化速度に影響を及ぼす結果を得た.分離大豆たんぱく質(粉末)と米粉(粉末)の調製方法は次年度への検討課題とした.平成24年度の目標はおおむね順調に進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
大豆たんぱく質と米粉の混合比率を変えた試料の調製を行い,今年度は加熱凝固の影響を検討する. 平成24年度に試料を豆乳(液体)と米粉(粉末)、分離大豆タンパク質(粉末)と米粉(粉末)の混合系で検討を行ったところ,分離大豆タンパク質(粉末)と米粉(粉末)の混合系では,大豆たんぱく質粉末の方が米粉粉末より水分吸収量が高いため,混合試料の水分を同一とすることができなかった.この点について検討を進めていく. 加熱による水分変化の影響をさける目的で真空包装機(現有)による調製を行う.加熱方法はスチームコンベクション(現有)を用いる.加熱によるゾル-ゲル転移を動的粘弾性測定および示差走査熱測定計により温度依存性を測定する.加熱ゲルの破断測定などのレオロジー測定を行う.被験者を兵庫県立大学環境人間学部学生として,官能評価と筋電位測定による咀嚼計測を行い,咀嚼解析を行う.今年度は結果の発表を行っていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
大豆たんぱく質と米粉の混合比率を変えた試料の調製を行い,加熱凝固の影響を検討する.分離大豆タンパク質(粉末)と米粉(粉末)の混合系では,大豆たんぱく質粉末の方が米粉粉末より水分吸収量が高いため,混合試料の水分を同一とすることができなかった.この点について粉末の水分吸収の履歴を検討する(試薬購入). 加熱による水分変化の影響をさける目的で真空包装機(現有)による調製を行う.加熱方法はスチームコンベクション(現有)を用いる.(真空包装剤消耗品購入).加熱によるゾル-ゲル転移を動的粘弾性測定および示差走査熱測定計により温度依存性を測定する(銀製密封容器消耗品購入).加熱ゲルの破断測定などのレオロジー測定を行う.被験者を兵庫県立大学環境人間学部学生として,官能評価と筋電位測定による咀嚼計測を行い,咀嚼解析を行う(筋電位関連消耗品購入).これらより食感の改良について検討を行う.平成25年度は消耗品に研究費を使用する計画である.
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