研究課題/領域番号 |
24500948
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
山本 登志子(鈴木登志子) 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (60301313)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脂質メディエーター / PGE2 / COX-2 / mPGES-1 / 自然薯 / 抗炎症 / 抗腫瘍 |
研究概要 |
本研究では、脂質メディエーターの1つであるプロスタグランジン(PG)E2産生系をターゲットとして、自然薯による抗炎症・抗腫瘍効果を立証し、その機能性成分の同定目指す。 PGE2合成系において、特に病態時に誘導されてくるシクロオキシゲナーゼ(COX)-2と膜結合型PGE合成酵素(mPGES)-1の高い発現とPGE2産生亢進の認められるヒト肺癌A549細胞ならびに大腸癌Caco-2細胞を用いて、自然薯50%エタノール抽出物添加による両酵素の発現抑制効果について明らかにし、さらにCOX活性とPGE2産生量の低下についても確認した。PGE2は、様々な癌の発生や増悪化を導くことが知られている。次に、自然薯抽出物による抗腫瘍効果について検討した。自然薯抽出物添加によって、A549細胞における抗アポトーシス因子Bcl-2の発現抑制と、TUNEL法によるアポトーシス細胞の増加が確認された。以上の結果より、自然薯抽出物はPGE2合成系酵素の発現抑制を伴う抗腫瘍効果を有することが立証された。さらに、炎症モデルのLPS刺激マウスマクロファージRAW267細胞を用いた実験においても、自然薯抽出物によるCOX-2とmPGES-1の発現抑制が認められ、抗炎症効果についても結果を得た。 このような自然薯の効果が、COX-2とmPGES-1を転写レベルで制御しているのかについて、ルシフェラーゼ遺伝子を用いたレポーターアッセイ法によって解析した。少なくともCOX-2については、自然薯によるプロモーター活性の低下を示す所見が得られた。今後、mPGES-1についても検証を進めるために、現在レポーターアッセイ用のプラズミドDNAと実験系を構築中である。一方、mRNA発現レベルでは上昇の見られたPPARγについては、自然薯によるプロモーター活性の上昇が認められず、転写レベルでの制御は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた自然薯によるCOX-2とmPGES-1の発現抑制効果について、モデル細胞を用いた検証はおおむね達成できた。ターゲットとするCOX-2やmPGES-1の転写調節に関与する炎症性サイトカインの発現についても、TNF-α、IL-6、NF-κB、IL-1βなどの所見を得た。遺伝子発現レベルのみならず、タンパク質発現や酵素活性、PGE2産生量についての効果も確認された。さらに、COX-2プロモーターの活性低下についても所見を得ている。また、COX-2とmPGES-1発現抑制に伴う癌細胞のアポトーシス誘導も遺伝子発現解析ならびにTUNEL in situ 検出法により明らかにし、培養細胞を用いた自演所抽出物による抗腫瘍効果が立証された。 さらに、次年度以降に予定していた動物モデルを用いた検証についても、本年度内に皮膚癌モデルについては検証実験を開始している。すでに、自然薯の抗腫瘍効果を示す所見を得ている。 ただし、mPGES-1のプロモーター活性測定ならびにメタボローム解析については次年度にも継続予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、本年度細胞レベルで実証した自然薯の効果について、いくつかの病態モデルマウスを用いて検証することを中心に遂行する予定である。本年度、すでに準備が進んだ皮膚癌モデルマウスを用いた検証では、自然薯抽出物塗布あるいは自然薯含有食による腫瘍塊の数、体積、重量の減少が認められている。さらに、生化学的、病理組織学的解析を進めていく予定である。あわせて、本年度は炎症モデルについても検討する予定である。さらに、マルチリポーターアッセイ系を構築し、COX-2とmPGES-1のそれぞれの発現抑制に関わる機能性成分の単離を試みる。 また、本年度予定していたmPGES-1プロモーター活性の解析とメタボローム解析について、達成を目指して継続していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物購入費 100千円、モデル動物作製ならびに維持費 100千円、試薬・実験器具 930千円、成果発表旅費 350千円、研究協力謝金 150千円、論文投稿料・印刷料 150千円。合計1,780千円
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