研究課題
脂質メディエーター合成系におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)-2と膜結合型PGE合成酵素(mPGES)-1の誘導と、それに伴うPGE2の過剰産生が炎症や癌の惹起や増悪化に関わる。平成24年度には、自然薯抽出物によるこれらの酵素の発現抑制と細胞レベルでの抗炎症・抗腫瘍効果を明らかにした。平成25年度は、これらの効果をin vivo解析において実証するために、免疫系制御と炎症反応を伴う皮膚癌モデルを用いて、自然薯の効果を検討した。本モデルにはイニシエーターとして7,12-dimethylbenz[α] anthracene (DMBA)と、プロモーターとして12-Ο-tetradecanoylphorbol 13-acetate (TPA)を21週間連続塗布したマウスを用いた。自然薯処理群として、10%自然薯粉含有食の経口投与(自然薯含有食群)、あるいは自然薯粉50%エタノール抽出物の塗布(自然薯抽出物塗布群)を行った。各群のマウスの腫瘍形成を計測したところ、自然薯処理群において、ポリープのサイズに抑制効果が認められ、病理組織検査でも癌化した角化細胞増殖による表皮の肥厚の抑制が観察された。さらに、組織化学的解析により、COX-2免疫陽性反応の低下と、癌組織周囲の炎症性細胞の浸潤低下も認められた。また、皮膚中の脂質を抽出し、液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS-MS)を用いてリッピドメタボローム解析を行ったところ、自然薯処理群においてPGE2とPGD2の産生量が減少し、PGF2α産生量は上昇していた。遺伝子発現解析の結果では、COX-2、mPGES-1、IL-1β、IL-6の発現抑制が確認された。以上の結果より、皮膚癌in vivoモデルにおいて、経口摂取と抽出物塗布のいずれでも、自然薯のPGE2合成系酵素の発現抑制を伴う抗炎症・抗腫瘍効果を有することが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度予定していた皮膚癌モデル動物を用いた自然薯によるCOX-2とmPGES-1の発現抑制効果と抗炎症・抗腫瘍効果についての検証は達成できた。さらに、リッピドメタボローム解析においても、動物実験におけるPG代謝産物の解析結果を得ることができた。また、培養細胞系を用いたmPGES-1プロモーターアッセイの構築も順調に進んでいる。平成25年度の結果から、自然薯粉の経口摂取においても効果が認められたことから、次年度には、大腸癌モデルならびにアトピー性皮膚炎モデルについて検討していくための準備に着手している。
平成26年度は、自然薯の効果をさらに他の疾患モデル動物で検証する。そのために用いるモデルには、大腸癌モデル、アトピー性皮膚炎モデルを予定している。解析手法については、これまでの方法に加え、分子イメージング解析も検討している。また、in vitro実験においては、mPGES-1の転写抑制を明らかにするためのリポーターアッセイ系を確立し、検証する。また、自然薯の有効成分の単離同定も進めていく予定である。
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