研究実績の概要 |
今年度は,数種のアミノ酸を検討材料に加え,リンゴ剥皮後に生じる褐変を,アミノ酸を水中に添加して得られる水の構造化によって,制御できないか否かを検討した。青森県産サンフジを用いて,褐変を防止するための最適アミノ酸量を検討した結果,同一リンゴのサンプリングする場所や個体ごとでばらつきはあるものの,少なくとも0.4mol/kgでは添加1時間以内に(30℃),明らかに褐変を抑制した。濃度をさらに0.1mol/kgに低くするとやや明確ではなくなり,0.01mol/kgであるとほとんど差がなくなった。目視状態での観察を数値化するために色差計でのL*a*b*で追跡したところ,色差計でのパラメータでは,L*,b*の変化よりも,a*の変化が顕著であったことから赤色へ変化する目視での変化と一致していた。ここで用いたアミノ酸すべてにリンゴ褐変防止の可能が示された。アミノ酸の添加の影響はa*の抑制として追跡可能なことが示されたが,日ごとの経時変化は認められなかったことから,日単位での反応速度定数を解析することはできないと考えられた。さらに,現時点では,パラメータαとa*の変化との間には一貫した関係は明らかにされなかったことから,水の構造化が酵素活性に影響を与えるものの,パラメータαで示される溶質-溶質分子間相互作用が存在する状況の中での微細な溶質ー溶媒間分子間相互作用の違いは褐変現象の差を可視化させるまでには至っていない可能性が考えられた。
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