研究課題/領域番号 |
24500952
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
小谷 スミ子 十文字学園女子大学, 研究所, 客員研究員 (60018653)
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研究分担者 |
城 斗志夫 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00251794)
山口 智子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70324960)
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キーワード | グルテンフリー / 玄米粉パン / 米糠 / HPMC / GABA / 抗酸化性 / ORAC値 / フィチン酸 |
研究概要 |
【目的】昨年度は、玄米粉に含まれる機能性成分γ-アミノ酪酸(GABA)含量が玄米粉パン製造過程で大きく変動すること、また抗酸化性(総ポリフェノール量、DPPHラジカル捕捉活性、ORAC値)が白米粉より有意に高いことを明らかにした。今年度は、玄米粉または米糠を添加した米粉パンの製造過程におけるGABA含量、グルタミン酸(Glu)含量、抗酸化性(H-ORAC値、L-ORAC値)およびフィチン酸含量の変化を測定することを目的とした。【方法】材料:白米粉は平成23年度新潟産コシヒカリパウダーライスDKタイプ(新潟製粉㈱)、玄米粉は平成23年度新潟産コシヒカリ(㈱新生バイオにて製粉)、米糠は㈱タイナイ、増粘剤のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)はメトローズSFE-4000(信越化学工業㈱)を使用し、白米粉に玄米粉または米糠を添加した米粉パンを製造した。米粉パンのGABA含量、Glu含量、抗酸化性(H-ORAC値、L-ORAC値)およびフィチン酸含量を測定した。【結果・考察】玄米粉を添加した米粉パンの製造において、材料中のGABAとGlu はイースト添加により増加した。またGABAは1次発酵過程で大きく増加したが、2次発酵・焼成過程では逆に減少した。一方Glu は1次発酵・2次発酵・焼成過程のいずれでも大きく減少した。本結果は、イーストおよび玄米粉中に内在するプロテアーゼやグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)の活性化条件の重要性を示唆する。米粉の抗酸化性(H-ORAC値、L-ORAC値)は米糠>玄米粉>白米の順に高く、米糠は玄米粉の約5倍の値を示した。フィチン酸は白米粉には含まれず、米糠は玄米粉の約11倍であった。米糠を添加した米粉パンの製造においては、抗酸化性及びフィチン酸含量のいずれも減少が見られたが、米糠を添加しないパンに比べて有効な含量であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度は以下のようである。 ①玄米粉を添加した米粉パンの比容積は小さく硬いパンとなった。その原因は玄米粉の澱粉損傷度の高さにあった。改善策として、米糠を白米粉に添加した米粉パンの製造を試みたところ、適度な比容積の米粉パン製造が可能となった。次にパン生地と焼成後の米粉パンとの関係を見出すための基礎データとして、増粘剤HPMCを添加した米粉パン生地の流動特性を検討したところ、特徴的な挙動を見出すことができた。 ②玄米粉に含まれる機能性成分GABA含量は、玄米粉パン製造過程で大きく変動することを明らかにした。GABA合成基質となるGlu含量を1次発酵後、2次発酵後および焼成後に測定したところ、GABAとは異なる挙動を示した。製造過程における生地の温度およびpHが、イーストおよび玄米粉に内在するプロテアーゼやGADの活性を変動させるためと考えられる。 ③玄米粉の抗酸化性(総ポリフェノール量、DPPHラジカル捕捉活性、ORAC値)が白米粉より有意に高いことを明らかにした。米糠の抗酸化性(H-ORAC値、L-ORAC値)は玄米粉よりはるかに高い値を示した。フィチン酸は白米粉には含まれず、米糠は玄米粉の10倍以上含まれた。米糠を添加した米粉パンの製造においては、抗酸化性及びフィチン酸含量のいずれも減少が見られたが、米糠を添加しないパンに比べて有効な含量であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、以下の通りである。 ①増粘剤HPMC添加米粉パン生地の流動特性を検討したところ、特徴的な挙動を示すことが分かったので、玄米粉および糠を添加した米粉パン生地についても流動特性を検討する。また米粉パン製造の最適条件とパン生地粘度との関連性を明らかにする。 ②玄米粉を添加したグルテンフリー米粉パンの製造過程における機能性成分GABA含量とその前駆体であるGlu含量の消長を検討し、関与する酵素の動態を明らかにできたので、今後は米糠を添加した米粉パンについて検討する。 ③玄米粉および糠を添加したグルテンフリー米粉パンの製造過程における抗酸化性(総ポリフェノール量、DPPHラジカル捕捉活性、H-ORAC値、L-ORAC値)およびフィチン酸含量の消長を明らかにできたので、抗酸化作用を持ち、活性酸素種などのラジカルと反応するフェルラ酸含量についてその消長を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験材料、試薬、実験器具などの購入が予定より少額で済んだため次年度使用額が生じた。 前年度に加え、新たな実験材料、試薬、実験器具などが必要となるので、それらの費用に充てる。
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