研究課題/領域番号 |
24500953
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
市川 朝子 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (30141295)
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キーワード | 米粉 / 物性 / 官能評価 / ルウ・ソース / ベーグル / 中華まんじゅうの皮 / グルテンフリー米粉パン |
研究概要 |
本研究は平成24年度から3年間にわたり米粉の調理方法を検討することで、従来は小麦粉の調理とされてきたものへの応用事例を一連の結果としてまとめ、社会のニーズに対応できるようにする取り組みである。 平成24年度の研究実績の概要のところですでにまとめてきたが、日本の食糧自給率を高い水準にもっていくための取り組みとして、日本の気象条件や風土に適した食品の中で今回は米の消費量拡大のため、炊飯による消費拡大が期待できないため、米を米粉として用いることで小麦粉調理の代替方法を検討したいと考えた。小麦粉を主とする調理をその調理性から考えると大きく3種類に分類される。第1は小麦粉からドウをつくる過程で生地中に形成されるグルテンを主とする調理であり、前年度のパン生地に引き続き、今年度も米粉パンについてさらなる検討を続けた。第2は適度のグルテン形成と主成分であるでんぷんを糊化することでその骨格構造が形成されることを生かした機能性をもつ調理であり、本年度はパンケーキ及び揚げドーナツについての比較検討を行った。また、第3は主としてでんぷんの機能性を生かした汁のとろみづけであり、本年度はホワイトルウから調整した各種濃度のホワイトソースについて、小麦粉を用いて調整した場合の物性と食味との比較について検討した。 平成26年度は今回の科研費助成の最終年度となるため、小麦粉調理のこれら3種類の調理性に対応し、比較的日常食品として多く消費されている食品例の米粉代替についての検討を行い、総括的なまとめにまで導いていけるように実験を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
9.に記載したとおり、各々の調理で小麦粉が果たしている役割を米粉を用いて調整する場合にはどのような工夫を加えることが必要かについて材料の種類、配合割合及び調製条件等について検討してきたが、米粉を用いることで日本における米粉の消費量を増大させていきたいという点も重要なポイントとなる。この点を考慮すると、まずは、主食として消費できる食品の検討が重要と考えられるため、パンについての検討は欠かせない。米粉パンの問題点は、米粉生地ではグルテンの形成が期待できないため、保形性を補う何らかのグルテン様の機能を有する素材を加える必要がある。そこで、本年度は、市販の増粘剤としてすでに幅広く食品に利用されている「ナノコン」を用いてグルテンフリー米粉パンを調製することを試みた。「ナノコン」はこんにゃくから抽出されるコンニャクマンナンを高濃度に含有したゾル状こんにゃくで、水、液体、固体、粉末など多様な性状の食材料と容易に混合することが可能な特徴を有する。解毒作用,体脂肪の減少、コレステロールや血糖値の調節などに有効な機能性も期待されている。しかし、パンについては、現在までのところ、強力粉へ米粉の一部を添加する方法が市場化へ一部応用されているに過ぎないため、グルテンフリー米粉パンに添加する場合の影響を検討した。また、第2の調理例としてパンケーキ、ドーナッツを、第3の調理例としてグラタンや、クリームスープに用いるソース類に米粉を用いた場合の物性と食味を検討することで、米粉使用の場合の特性をある程度まで捉えることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は本研究テーマの最終年度にあたるため、小麦粉調理で挙げた主な3種類の調理性に対応すべき米粉の操作方法の要点についてまとめ、調製された製品の物性や食味の面から評価を加えて、実用的に応用が可能となるような全体的総括が出来ればよいと考えている。 さらに、大妻女子大学の当調理科学研究室には、粉製品の物性測定に欠かせないファリノグラフが設置されている。この機器を用いて、小麦粉パンの生地と、調整できた米粉パンの生地をファリノグラフのデーターから比較し、測定結果の解析により、どのような調製試料条件が揃った場合には、従来からの強力粉を用いたパン生地と遜色のない製品となり得るかが生地の測定結果から推測できるようにすること、さらに米粉パンの場合に特徴的な生地上での現象が明確に把握出来るか等についても実験が進められることを期待している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は平成24年度から26年度にかけての3年計画の研究である。従って今年度までの結果を検討し、最終年度に必要な計量機器などが生じた場合、平成26年度の予算と合わせて使用する必要性が生じる場合を考慮してきた。現在、購入機器については多方面から検討中である。 試料の調製条件下で、どのような粘弾性、硬さを有するものが、焼成後の製品の仕上がり性状に影響するかについて、生地の段階で判断できるようになることは、良好な製品を無駄なく仕上げるための欠かせない有効なデーターとなりうる。そのような物性を適切に測定できる機器、あるいは、データー入力に欠かせないパソコン(機器の分析データー解析用として)等について検討中である。
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