研究課題/領域番号 |
24500954
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
高橋 智子 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 教授 (10364861)
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研究分担者 |
田山 二朗 独立行政法人国立国際医療研究センター, 耳鼻咽喉科, 医長 (50221403)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | テクスチャー特性 / 流動特性 / ばね緩和法 / 顕微鏡観察 / 特別養護老人ホーム |
研究概要 |
平成24年度はペースト状パン粥を調製し、その力学的特性の測定条件について、検討することとした。焼成したパンはみみを取り除き、15mm×15mmに切断後、液状食品として、蒸留水、ミルク溶液(15%粉末ミルク(牛乳を主原料))、ミルク溶液重量の10%をサラダ油に置換した3種類の溶液を加えおのおの真空充填を行った後、95℃20分間加熱した。パンの重量と液体重量の比率は1:5である。加熱後、1,200rpm、撹拌時間を10秒間で粉砕した。テクスチャー特性の測定結果では硬さ、付着性ともに、試料品温20℃の測定値が試料品温45℃よりも大きいものとなった。また、サラダ油置換パン粥試料の硬さ、付着性はいずれの試料品温、測定条件においても大となり、次いで、ミルク溶液添加パン粥試料、そして蒸留水添加パン粥試料の順に小となった。プランジャーの圧縮速度のテクスチャー特性への影響は、いずれのパン粥試料も圧縮速度が速くなることで、硬さも付着性も大きくなった。油脂を含むサラダ油置換パン粥試料とミルク溶液添加パン粥試料の硬さおよび付着性の圧縮速度依存性は、軟らかく油脂分を含まない蒸留水添加パン粥試料よりも大きいものとなった。凝集性の圧縮速度依存性は、プランジャーの戻り距離5mmのミルク溶液添加パン粥試料を除いて、圧縮速度が速くなると凝集性は小さくなる傾向を示した。戻り距離5mmのミルク溶液添加パン粥試料の圧縮速度10mm/secにおける凝集性の標準偏差も大きく、凝集性の値のばらつきが大となった。 パン粥試料の顕微鏡観察の結果、ミルク溶液パン粥試料には、用いた粉末ミルクの原料である牛乳由来の脂肪球が分散しているのが観察された。サラダ油置換パン粥試料には、パン粥に含まれる水部分にサラダ油が直径30~120μmの球状のO/W型エマルションの状態で分散していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はペースト状パン粥試料の調製方法を確立した。まず、原料となるパンはホームベーカリー(パナソニック製)で調製した。パンは焼成後、室温30分間放冷、20℃15時間放置した。原料となるパンの品質管理は、嵩密度と水分測定を行った。研究計画では油脂添加としてバターを用いる予定であった。しかし、パン粥試料の力学的特性に影響を与える程度の添加量のバターを加えると、高齢者の嗜好にあわないとの特別養護老人ホーム管理栄養士の評価であった。そこで、エネルギー補給を目的とした栄養補助食品では油脂として何が用いられているかを確認したところ、サラダ油が主であった。本研究において用いる油脂をバターからサラダ油に変更した。パン粥の力学的特性の把握の一環としてテクスチャー特性の測定条件を検討した。圧縮率、プランジャーの圧縮速度、プランジャーの戻り距離を変えて測定した結果、圧縮率は66.7%、圧縮速度10mm/sまたは1mm/s、プランジャーの戻り距離は15mmで行うことで、変動率の少ない結果が得られることがわかった。そこで、平成25年度はこの測定条件でテクスチャー特性を測定することとした。また、ばね緩和法(申請設備)による流動特性の測定が、試料の構造を把握するのに有効であることもわかった。顕微鏡観察による油脂の分散状態を把握することも、ペースト状パン粥の物理的特性を把握するうえでも重要であることが示された。 特別養護老人ホームの管理栄養士に3種類のペースト状パン粥試料を評価してもらったところ、いずれの試料も付着性が大きく、食塊形成が困難であり、口からのどへと送り込めないだろうとのことであった。そこで、ペースト状パン粥試料の健常者による官能評価を平成24年度では見送り、平成25年度、ゲル化剤を添加したパン粥試料で健常若年者による官能評価を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に試料として用いたペースト状パン粥試料3種類(蒸留水、ミルク溶液(15%粉末ミルク溶液)、ミルク溶液重量の10%をサラダ油に置換)に、ゲル化剤を添加しゲル状のパン粥を調製する。測定試料品温20℃における3種類の試料の硬さが同程度になるよう、ゲル化剤の添加濃度を変えて調製する。ゲル状パン粥試料の力学的特性については、試料品温20℃、45℃に加え、10℃でも測定する。テクスチャー特性はプランジャーの圧縮速度依存性を把握する。0.5mm/secの圧縮速度によるひずみ-応力関係を把握することに加えて、速い圧縮速度(10mm/sec)におけるひずみ-応力の関係についても検討する。動的粘弾性による力学的特性の把握も併行して行う。3種類の試料の食べやすさの評価として、健常若年者による官能評価を行う。特別養護老人ホームの管理栄養士による評価も昨年同様行う予定である。加えて、咀嚼筋電位測定、嚥下時筋電位測定を行い、咀嚼しやすさ、飲み込みやすさの評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度助成金の残額で平成25年度への繰り越し金が発生した理由として、予定していた健常若年者による官能評価を次年度に変更したため、人件費、謝金が平成24年度の残額になったと考えられる。平成25年度は、平成24年度繰り越し金を含め、実験補助者に対する人件費、官能評価および筋電位測定被験者に対する謝金等に使用する予定である。
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