研究実績の概要 |
本研究ではサラダ油を含有する均一ゲル状パン粥表面にとろみを付加することが、ヒトの嚥下状態への影響を検討した。基本パン粥試料、加えてグルコマンナンを主原料とした市販とろみ調整食品により調製した粘性率の異なるとろみを付加したパン粥試料2種類(濃いとろみ程度を付加パン粥試料:とろみパン粥試料A, 流動食用なめらかプラスいちごソース程度とろみ付加パン粥試料:とろみパン粥試料B)の3種類を試料とした。官能評価の喫食方法は、口中に試料を入れて咀嚼を行わず、口蓋と舌で食塊形成し嚥下するというものである。官能評価における口中で感じる試料のかたさで、パン粥の品温が20℃、45℃ともに、基本パン粥試料ととろみ付加パン粥試料の間に有意差が認められなかった。この結果は、官能評価時の咀嚼を伴わない喫食方法による影響があると考えられる。品温20℃では、食べやすいと評価されたとろみ付加パン粥試料2種類は基本パン粥試料に比べ、有意に軟らかく、付着性が小さいことが認められた。一方、品温45℃においては口中感覚の評価項目すべてで、基本パン粥試料ととろみ付加パン粥試料に有意差は認められなかった。嚥下直前の食塊のテクスチャー特性は品温20℃で、もとのパン粥試料の硬さに比べ、顕著に軟らかく、付着性も小さくなった。一方、品温45℃食塊のテクスチャー特性の硬さは、もとのパン粥試料と食塊試料で同程度であった。テクスチャー特性の付着性を構成する付着時間が最も長い品温45℃パン粥試料の食塊形成に要した時間は、有意に長いことが認められた。嚥下時筋活動時間において、品温45℃とろみ付加パン粥試料2種は品温20℃基本パン粥試料の筋活動時間に比べ、有意に短いことが認められた。嚥下内視鏡検査の結果、基本パン粥へのとろみ付加の有無による喉頭蓋谷における残留の差は認められなかったが、被験者による試料の残留状態が顕著に異なることがわかった。
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