研究課題/領域番号 |
24500955
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
飯島 陽子 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 准教授 (90415456)
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研究分担者 |
鈴木 秀幸 公益財団法人かずさDNA研究所, 産業基盤開発研究部, 主席研究員 (80276162)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 香辛野菜 / 香気成分 / メタボローム / モノテルペン / ショウガ / サンショウ |
研究概要 |
香辛野菜において、その香りの質や強さは嗜好の上で重要である。本研究では、香辛野菜の香気成分の生成蓄積や調理加工による消長に着目し、食する立場からの香辛機能を制御する因子を解明することを目的とした。今年度の研究実績は以下の通りである。 1.メタボローム解析によるショウガ収穫時期による香気成分および香辛成分に関与する成分群の組成変化 ショウガの根茎について、栽培地の異なる条件で新ショウガとひねショウガをサンプルとし、一次代謝物、フェノール化合物群、香気成分の計273成分を対象にメタボローム分析を行い組成比較を行った。多変量解析により、いずれの成分群も新ショウガとひねショウガでの分類が可能であった。特に香気成分では、、新ショウガにおいて、geranyl acetate、citronellyl acetate、bornyl acetateなどのアセチル化物が存在し、新ショウガとひねショウガの香気特性を判別していることが示唆された。 2.ショウガ・サンショウにおける香気成分生合成酵素をコードする候補遺伝子のスクリーニング 粗酵素系における酵素活性を確認後、ESTデータベースを用いてこれらの酵素に関与する遺伝子群のスクリーニングを行った。ショウガについては、主要香気成分の生成に関与する3種の酵素(エステラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アセチルトランスフェラーゼ)に関与する候補遺伝子情報を取得し、完全長cDNAを取得した。サンショウについては、モノテルペン合成酵素などについて候補遺伝子情報を取得し、完全長cDNAを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の交付申請書では、平成24年度は、①ショウガ・サンショウの収穫時期による香気成分組成の相違についての検証、②ショウガ・サンショウの成分組成における食品加工の影響の検証、であった。①については、香気成分のみならず、辛味成分や糖・アミノ酸など他の成分群について、比較分析を行うことができ、その結果、興味深い結果を得ることができた。②については、現在検証中であり、24年度では終えることができなかった。しかし、当初、平成25年度に行う予定であった、「ショウガ・サンショウにおける香気成分の生合成酵素系の検証とそれに関わる候補遺伝子のスクリーニング」について、前倒しで行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
現段階では、ほぼ予定どおり研究を進めているが、「調理加工における成分の変化の検証」について、今後詳細に進める予定である。ただし、当初の研究計画では、加工による大幅な成分組成変化を想定し、変化した成分の構造決定等を予定していた。しかしながら、予備実験において、香気成分などは、調理加工中に揮発によるロスなどはあるものの、成分そのものの構造変化があまり起こらないことが推測された。そのため、調理加工中の成分構造変化を想定して計画をたて、25年度で行う予定であった「ショウガ・サンショウの食品加工中に変化した成分の構造決定」については、今後行う必要がない可能性が高い。その代わり、ショウガ、サンショウとも収穫時期や部位による香気組成の相違が大きいことが分かった。これらの変動は酵素的に行われるので、今後は、香気成分生合成に着目し、遺伝子の機能同定に精力的に進める予定である。次の実験を計画している。 1.ショウガ・サンショウにおける主要香気(テルペン系香気成分)の生成に関与すると考えられる酵素遺伝子のサブクローニングおよび大腸菌などによるタンパク質の異種発現と酵素活性測定を行い、機能同定を行う。 2.ショウガ・サンショウ香辛成分の調理加工法の違いによる成分の消長を調べ、その要因について検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、計画よく研究費を使用したが、物品費が予定より安く購入できたものがあったため、3,935円の余剰があった。この研究費を次年度研究費と合わせて、試薬の購入に充てる予定である。
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