研究課題/領域番号 |
24500957
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研究機関 | 大阪樟蔭女子大学 |
研究代表者 |
安藤 真美 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 准教授 (50234183)
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キーワード | 氷温 / フラクタン / 果物 |
研究概要 |
研究では果実・野菜類を材料とし、それらに氷温貯蔵を施すことにより低温ストレスによる多糖類の分解を促進させ、風味の改善をめざす。この操作による甘味の向上は報告されているが、細胞壁など主要な構造物には変化が認められていないことから、多糖類の中でも含有量が少ないフラクタンの量的な変化に焦点をあて、その分解産物などによる風味改善への関与を明らかにする。これらにより、氷温貯蔵を活用した安全・安心な食材の提供とブランド化への貢献をめざすことを目的としている。 前年度の研究において、「スイカ」の氷温貯蔵により生じた甘さの評価の上昇には、フラクタンの分解物が官能検査において認められた甘味の強さに影響したと推察された。 今年度は、その他の果物として「パインアップル」、「バナナ」、「メロン」、「モモ」とした。実験区は、冷蔵区(0℃、5℃)、氷温区(-1℃)の3区分とした。貯蔵期間は、最長で2週間とし、0・3・7・14日目に、(1)重量(2)外観(3)遊離糖の定量(4)官能検査を実施した。 結果として官能評価において、-1℃のスイカ・パイナップルでは貯蔵期間の延長に伴い「甘さ」を含む評価が有意に上昇したが、0℃では大きな変化は認められなかった。しかし、糖類の量は0℃において最も大きな上昇を示したことから、氷温貯蔵により生じた甘さの評価の上昇には、糖類以外の物質による甘さの増強効果が生じている可能性が推察された。さらに、フラクタンの測定結果からもスイカと同様に氷温貯蔵により生じた甘さの評価の上昇には、フラクタンの分解物が官能検査において認められた甘味の強さに影響したと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の結果より、数種果物を氷温貯蔵することで重量の減少抑制効果や、官能的な甘さの増加が認められ、保存性の向上と高品質化が同時に実現された。しかし、その影響物質として推定されているのがフラクタン量でのみで確認されているため、他の視点からの原理追究が平成26年度以降の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
多糖類の主な供給源は細胞であることから、そこに構造的変化が生じている可能性があるが、光学顕微鏡による観察では変化を認めていない。しかしながら、さらに微小な構造については観察が行われていないため、透過型電子顕微鏡による組織観察を行い、細胞壁付近を中心に貯蔵時間ごとの構造を比較する。 また、低分子物質の増加による抗酸化能の変化を調査するため、試料櫨物の水溶性両分を分散し、ケミルミネッセンス法によるペルオキシルラジカル捕捉活性能を測定する。
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