日本の水道水は、おおむね渋みえぐみのない、のど越しの良い軟水であり、水質基準に沿って安全性も確保されている。水道水の水質は,原水である河川水,地下水,湧水の質を反映する。なかでも含有ミネラル成分濃度や硬度は水道水の味に多様性を与えているとの報告があるが、国内の水道水の味の評価や水質による分類の報告例は少ない。本研究では水道水に比較的高濃度に含まれるNa,Ca,K,Mg,Siの濃度および物性をもとに国内の20か所の水道水を主成分分析にてグループ分けした。その結果,水道水は地域ごとに似かよった水質特性を示し,3グループに分かれた。水道水の取水源は,河川水,ダム水,配水池,渓流水などの地上水と,深井戸水,浅井戸水,湧水などの地下水がある。また,水道水の取水地の地質年代を,(独)産業技術総合研究所地質調査総合センター 地質図表システムの地質Navi (http://gbank.gsj.jp/geonavi/) から検索した。これらの情報と,味の評価を,主成分分析結果と照らし合わせると,主成分分析結果で得られたグループには取水地の地表水,地下水の別にと地質年代に共通する特徴が見られた。Si濃度やCa濃度が低いグループには,中生代以前の比較的古い地質由来の地表水が多く,味の評価の高い水道水が多く含まれていた。また,判別分析からSi濃度,Ca濃度,pHの判別係数が高く,主成分分析での結果と矛盾しなかった。
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