研究課題/領域番号 |
24500962
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
小竹 英一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品素材科学研究領域, 主任研究員 (20547236)
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研究分担者 |
長尾 昭彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品素材科学研究領域, 上席研究員 (40353958)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カロテノイド / 生体利用性 |
研究概要 |
ヒトは40種類ものカロテノイドを食品から摂取するが、組織に蓄積されるものは限られている。生体にはカロテノイドに対する選択的吸収・蓄積機構が存在し、生体利用性と密接に関わっていると考えられるが、その機構については未解明である。消化管でのカロテノイドに対する選択的吸収機構を解明し、カロテノイドの生体利用性向上を図るため、平成24年度では、吸収受容体によるカロテノイド吸収選択性について検討を行った。 吸収受容体(SR-B1)の阻害剤を用いて、ヒト腸管モデル細胞による各種カロテノイドの取込量から受容体依存率を解析した。カロテノイドはタウロコール酸、オレイン酸、モノオレイン、リゾリン脂質から構成される腸管混合モデルミセル中に可溶化させて細胞へ添加し、37℃、2時間インキュベート後に細胞への取込み量をHPLCで定量した。その結果、受容体依存率は極性が高いカロテノイドほど低く、β-カロテン>ルテイン>ネオキサンチン≧フコキサンチン=フコキサンチノールとなった。β-カロテンでは依存率が20-30%、フコキサンチンではほぼ0%であった。 すでに申請者らが明らかにしている受動拡散についてだけではなく、受容体を介した能動拡散においても、カロテノイドの極性と相関関係があることが明らかとなった。すなわち、受容体はより非極性のカロテノイドを選択的に吸収する特性を有していた。ネオキサンチンやフコキサンチンは通常の食事下でヒト血中に存在しないが、受容体経路による吸収がほとんど無いこともその一因であると考えられた。 ただし、受動拡散よりも能動拡散経由による吸収の割合が多いことも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カロテノイドの吸収における吸収受容体の影響について、阻害剤を用いた実験で概ね予想通りの成果が得られた。研究室のカロテノイドライブラリー中の全てについて検討していないため、平成25年度に検討を追加するが、残りのカロテノイドについても受容体依存率はその極性に相関すると推測できる。したがって、おおむね順調に推移していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に行った選択的吸収に関する吸収受容体の関与について、引き続き、他の極性の異なるカロテノイド(β-クリプトキサンチン、アスタキサンチン、バイオラキサンチンなど)についての知見を新たに加える。さらに、用いた吸収受容体SR-B1の阻害剤は、吸収トランスポーターNPC1L1の阻害剤でもあり、これらの関与を区別するためにsiRNAを用いてのノックダウン試験を行う。まずは、siRNA実験のための条件設定を行う(毒性試験や、細胞に適したリポフェクション試薬の選定等)。 カロテノイドの吸収には受容体依存経路以外にも単純拡散による経路が存在するので、受容体の特異性だけでは、一部のカロテノイドがほとんど吸収されない理由を説明できないが、排泄トランスポーターの関与を想定すれば説明がつく。そこで、平成25年度では排泄トランスポーターの関与についても検討する。最も代表的な排泄トランスポーターMDR1の関与について、阻害剤を用いて調べる。吸収受容体の場合と異なり、MDR1が阻害されればカロテノイドの取込み量は増加する。阻害剤がMDR1の基質となるローダミン123の取込みを増加することを平成24年度中に確認したものの、MDR1の発現量はウエスタンブロットでは、かなり少ないことも確認した。このため、用いる腸管モデル細胞は排泄トランスポーターを調べるには不適である可能性がある。そこで実験結果次第ではMDR1の発現量が高い肝臓のモデル細胞を使うことも考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり使用する。なお、次年度使用額618,898円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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