研究概要 |
メタボリックシンドロームや加齢、2型糖尿病の原因とも言えるエネルギー代謝の調節はNAD依存性脱アセチル酵素サーチュイン(sirtuins)による制御を受け、その結果ヒストンタンパクの脱アセチル化により種々の代謝系や加齢に関係する様々な遺伝子発現が増減することにより担われていることが明らかにされている。また、サーチュインがWntシグナリングを誘導することから、サーチュインとWntシグナリングによる加齢やメタボリックシンドロームとの関連が研究の焦点となっている。本研究では精製Wntを用いて、種々の代謝系や加齢、寿命の制御におけるWntの役割を明らかにすることを目的としている。 Wntタンパクは脂肪酸により修飾されているために疎水性と凝集性が高く、界面活性剤なしに精製することは極めて難しい。さらに、血清中にも微量存在する事から、それを除外することも実験上重要である。そこで胎児血清から内在性Wntを除いた培地を調製し、発現細胞を培養し、その培養上清より、種々の安定化剤や添加剤を用いたクロマトグラフィーにより、Wnt3a, Wnt4とWnt5aを高度に精製することに成功した。精製Wntと培養細胞を用いて、β-カテニン発現などの効果を解析するとともに、精製過程で得られたWntと相互作用するタンパクや誘導されるタンパクも同定した。精製したWntの個体レベルでの影響を解析するために、精製Wnt3a,Wnt4,とWnt5aをメタボリックシンドロームと2型糖尿病のモデルマウスであるKKayマウスに投与し、グルコールや肥満、血中脂質への影響を解析した。
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