カロリー制限は酵母から線虫、マウスに至るまでの生物の寿命を延ばすことが明らかになり、カロリーバランスと寿命の関連はエイジング研究で最も注目されている。カロリー制限はNAD依存性脱アセチル酵素サーチュインを活性化する。サーチュインを活性化するポリフェノールの1つレスベラロールはフォスフォジエステレース(PDE)を阻害し、サイクリックAMPの濃度を上げ、最終的にはAMPキナーゼを介して、サーチュインを活性化することが明らかになった。 一方、Wntの共役レセプターLRP6の遺伝子異常は家族性複合型高脂血症を引き起こし、WntシグナリングはAKT/mTOR->SREBP1を介し、脂肪酸合成とコレステロール合成をネガティブに調節していることが、最近明らかにされた。 本研究では、精製Wntを用いて、脂質代謝系やエイジングにおけるWntの役割を明らかにすることを目的としている。脂肪酸修飾によりWntタンパク質は疎水性と凝集性が高く、その精製は極めて困難である。血清に含まれる内在性Wntタンパク質を除去した培地を用い、Wnt3aとWnt4、Wnt5aを高度に精製し、分子量3万9千の単量体以外の複数のWnt分子種が存在することを明らかにした。また、Wntの標的として誘導されるタンパク質も精製・同定した。精製したWntを用いて、細胞レベルと個体レベルで、Wntが脂質代謝系やエイジングに及ぼす影響を解析した。
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