研究課題
本研究は、糖尿病性血管障害の発症に関わる未知のメカニズムを解明し、防御に役立てることを目的として行った。H25年度には、糖尿病性血管障害の発症原因に関わる新規候補化合物として合成したグルタチオンのN位糖化物が、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)とグルタチオン還元酵素(GR)の活性を顕著に阻害することを見出だした。H26年度には、新たに、もうひとつの新規候補化合物として考えており、これまで合成が困難であったS位糖化のグルタチオンを合成・精製することができた。S位糖化グルタチオンも抗酸化酵素GPxとGRの活性を著しく阻害することを見出だした。これら一連の結果については、すでに論文を作成し、国際誌へ投稿するところである。さらに現在、グルタチオンのN位糖化物とS位糖化物を用いて、培養ヒト血管内皮細胞に取り込ませることで細胞障害の発生を検討している。また、H25年度に食品成分であるミリセチン(Myr)が糖尿病性血管障害モデル培養細胞の生存率を回復させることを見出だしたため、H26年度はさらに様々な濃度で検討を行った。その結果、Myr濃度0.025 mMの添加で、実験を行った全ての濃度(0.005~2.0 mM)の中で最も糖尿病モデルの細胞生存率を回復させた。正常血管内皮細胞に比べ、糖尿病モデル細胞の48時間後の生存率は53.9%であったが、Myr 0.025 mM添加で98.6%まで生存率を回復させた。Myrはブルーベリー、クランベリー、カシス、ビルベリー等に最大142 mg/kg程度含まれる。体内で100%吸収されたと仮定した場合、Myrの分子量より、それらの果実を280 g摂取することで一時的にでも効果的な血中Myr濃度を得ることができると計算された。本研究では、このようにこれまで未発表の糖尿病性血管障害発に関わる原因候補因子および防御因子を挙げることができた。今後さらにそのメカニズム等検討を深めていきたい。
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