研究課題/領域番号 |
24500969
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 彰子 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (90348144)
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研究分担者 |
石丸 喜朗 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (10451840)
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キーワード | フラボノイド / コレステロール / 腸管吸収抑制 / NPC1L1 |
研究概要 |
過剰な食事性コレステロールの腸管吸収を抑制することは、高コレステロール血症の予防・治療のターゲットとなる。24年度には、Caco-2細胞を用いて腸管からのコレステロール吸収抑制成分をポリフェノールの中からスクリーニングし、ルテオリンおよびケルセチンがコレステロール吸収を抑制し、その作用がコレステロールトランスポーター(Niemann-pick C1 Like 1 Protein, NPC1L1)阻害であること、またラットを用いたin vivo 試験においてもコレステロール負荷による血中コレステロール値の上昇を抑制することを見出した。今年度は、これらフラボノイドによる血中コレステロール低下作用のメカニズムを解明するために、フラボノイドがNPC1L1の発現に与える影響について検証した。 Caco-2細胞にルテオリンとケルセチンをそれぞれ添加し、2、6、24、48時間インキュベートした後、mRNAおよびタンパク質を抽出し、定量PCRによりmRNA量を、Western blottingによりタンパク量を時間依存的に測定した。ルテオリン・ケルセチンともに6時間まではmRNA発現量に変化はなかったが、24時間では、ケルセチンで、48時間ではルテオリンで有意な減少が観察された。さらに48時間ルテオリンインキュベーション群では、ウエスタンブロッティングにおいてNPC1L1のタンパク質レベルでの減少が観察された。ここまでの検討において、Caco-2細胞ではフラボノイドとのインキュベーション1時間でコレステロール吸収抑制がみられたことから、短時間でみられた取込み抑制は、トランスポータータンパク質の発現抑制ではないことが明らかとなった。また、24~48時間インキュベートでNPC1L1の発現が減少したことから、in vivoでの連続的な摂取においては、トランスポーターの発現レベルでの調節が起こる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度~25年度の間に、Caco-2細胞、およびHEK293細胞を用いて作成した強制発現細胞により、フラボノイドの詳細な腸管コレステロール吸収抑制機構について解析した。25年度はNPC1L1タンパクへの作用に加え、新たに発現調節作用を見出した。またin vivo実験においては、24年度では経口投与失敗によるラット個数の減少があったが、25年度での再実験では経口投与の熟練によりラットの個数が確保できた。26年度では25年度の個体から摘出した腸上皮におけるNPC1L1発現量の検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
25年度はCaco-2細胞において、ケルセチンおよびルテオリンによるmRNAレベルでのNPC1L1の発現量の減少が観察された。26年度はこれらのフラボノイドを摂取させたラットの腸管上皮におけるNPC1L1発現量を調べる予定である。また、これらフラボノイドによるNPC1L1の転写制御への影響についてルシフェラーゼアッセイにより検討する。一方、短時間でのNPC1L1阻害機構については、NPC1L1の膜上へのトランスロケーション阻害について、阻害剤や膜画分のウエスタンブロッティング等により検討する予定である。
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