研究概要 |
ガーリックには抗がん作用、交感神経亢進作用、抗炎症作用、免疫調節作用等の生理・薬理効果が報告されているが、免疫調節作用については不明な点が多い。この点を明確にすることは栄養生理学や健康科学の側面からみて極めて重要である。 本年度は、免疫機能を担う各種白血球系細胞数の動態に及ぼすガーリックの脂溶性の主要含硫化合物・diallyl disulfide (DADS)の影響を検討した。12時間絶食した10週齢雄性ラットにDADS(0, 10, 20,40mg/kg体重)を経口投与し、投与0,1,2,4,6時間後に尾静脈より採血し、各種白血球系細胞(総リンパ球・単球・好中球・好酸球・好塩基球)を、投与4時間後にリンパ球のサブセット(Tリンパ球・Bリンパ球・NK細胞)の数を各々測定・解析した。さらに、投与2時間後に血漿コルチコステロン濃度を測定した。その結果、DADS投与により総白血球、総リンパ球および単球の各数は投与量に比例して低下したが、顆粒系の細胞数には変動がみられなかった。また、リンパ球系のサブセットのうちTリンパ球とBリンパ球の数はDADSの投与量に比例して低下したが、NK細胞数は変化しなかった。一方、血漿コルチコステロン濃度はDADSの投与量に比例して有意に上昇した。これらの結果より、DADS投与による血漿コルチコステロン濃度の上昇は交感神経活動の亢進に伴う視床下部‐下垂体‐副腎系の内分泌応答カスケードの活性化によると推定できる。また、血中の白血球系細胞数の動態はグルココルチコイドによって調節されていることから、DADS投与後のTリンパ球・Bリンパ球及び単球の各数の低下作用は血漿グルココルチコイド濃度の上昇を介した現象であると推定できる。以上より、DADS投与によってラット血中の獲得免疫を担う総リンパ球とサブセット及び単球の各数が投与量に依存して低下したと結論付けられる。
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