機能性食品としてのプロポリスによるヒストン脱アセチル化酵素(Hdac)活性調節機構については、アルテピリンCに代表される主要成分に阻害活性を確認していたが、抗ガン効果についてはその作用の関与が示唆されたものの、神経保護効果については別機構による可能性を示すという結果が得られた。 クロロフィルの代謝産物であり、牛肉や牛乳等に含まれるフィタン酸については、Hdac活性化作用を確認していたが、その作用によりHdac阻害剤とは反対に神経毒性を示す結果が得られ、その作用はミトコンドリア機能を低下させる作用に依存するという結果が得られた。フィタン酸による神経細胞毒性におけるHdacサブタイプ特異性については、Hdac2または3の活性化を介しているという結果が得られた。更に、低級脂肪酸系のHdac阻害剤である酪酸や特異性の低いHdac阻害剤であるSAHAにおいては、フィタン酸の毒性を抑制し、それら阻害剤自身がミトコンドリア機能を亢進する作用を有することを見出した。これは、近年注目されているが作用機序には不明な点も多いHdac阻害剤による認知症予防効果が、神経細胞におけるミトコンドリア機能亢進を介していることを示唆する結果である。
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