研究課題
本研究では脂質成分,特に劣化脂質と発がんの因果関係に着目して、胆汁脂質の劣化とそれが常時接触する胆道(胆嚢・胆管)の発がんリスクを検討するとともに、その調節による予防的治療戦略の提案を目指している。前年度の臨床的検討に引き続いて、胆道疾患患者胆汁をドレナージおよび経鼻内視鏡的に採取して新規バイオマーカーとしてペリオスチンを定量して臨床的意義を検討した。加えて、基礎的検討としてSASP関連遺伝子のプロファイリングをDNAマイクロアレイによる網羅的比較解析を行った。その結果、1.線維性変化を伴う硬化性胆管炎や胆道癌ではペリオスチンが高値を示す傾向を認め、そのバイオマーカーとしての臨床的意義が示唆されるとともに、2.劣化脂質の曝露によるウ胆道組織におけるIL8などの炎症性サイトカインの発現増強が認められた。以上より、前年度に得られた、劣化脂質曝露による胆道上皮細胞アポトーシスに加えて、脂質分子をリガンドするGタンパク共役型受容体G2Aなどの脂質代謝関連遺伝子発現変動がSASPに連動することが示された。次年度はその防御機構の検証を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究は食生活と発がんの関わりに着目して、保存食材の短時間高熱処理により発生する動脈硬化惹起物質の劣化脂質による胆道系への炎症・発癌惹起性の検証とその臨床への転用を目指している。脂質成分(特に劣化脂質)と発がんの因果関係に着目して、脂質に豊富な胆汁に曝露される胆道(胆嚢・胆管)発癌への劣化脂質の関与を検討し、その調整による予防的治療戦略を提案することを究極の目的としている。①胆道疾患患者胆汁の劣化脂質分析、②劣化脂質曝露による胆道上皮細胞アポトーシス、脂質分子をリガンドとする脂質代謝関連遺伝子発現プロフィリングの評価を計画したが、検体の収集は順調であった。また、基礎的検討のセッティングも順調で、その成果は2013年5月の米国消化器病学会で発表した。また、脂質分子をリガンドとそる脂質代謝関連遺伝子発現プロフィリングも順調に進み、その結果を日本肝臓学会、米国肝臓学会で発表予定である。次年度には①防御機能となる生体成分の拾い上げとメカニズム解析、②その摂取介入と腸管での吸収制御剤投与効果の検討に加えて、上記を並行して遂行することとなる。
劣化脂質による胆道組織傷害とそれに伴う慢性線維性炎症および発癌が示唆されたことから、基礎的研究として、1)劣化脂質による胆管上皮細胞アポトーシスに対する防御機構となる生体成分の拾い上げ、2)防御メカニズム解析を脂質代謝関連遺伝子発現プロフィリングから検証する。①臨床的には腸管脂質吸収阻害薬(NPC1L1阻害剤)による胆汁脂質動態への影響を評価してその治療的意義を検証する。②基礎的には、UDCAおよび各種リン脂質分子種と遊離脂肪酸による胆管上皮細胞傷害保護作用の検討するとともに、がん関連遺伝子発現の網羅的比較解析と、メチル化DNAの解析から発がん予防を評価する。
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