研究課題
主食用白米から調製した米胚乳タンパク質(RP)と未利用資源である米糠タンパク質(RBP)の長期摂取(8~10週間)による糖尿病性腎症進行抑制効果の作用機構解明を目的とした。2型糖尿病の非肥満モデルとしてGoto-Kakizaki(GK)ラット、並びに肥満モデルとしてZucker Diabetic Fatty(ZDF)ラットを用いた。GKラットにおけるRPの腎症進行抑制効果はMCP-1の遺伝子発現上昇抑制を介し、そのMCP-1発現上昇抑制は抗酸化酵素のHmox1の遺伝子発現上昇を介している可能性が考えられた。血中CRP濃度も有意に抑制されていたので、炎症反応や酸化ストレス軽減により、腎症進行が遅延されることが推察された。ZDFラットでは、RP・RBP両群ともに腎症進行抑制効果に加えて、GKラットでは明確な効果がみられなかった血糖上昇抑制及び脂肪肝抑制効果が顕著であった。そこで、ZDFラット肝臓及び腎臓の遺伝子発現応答を解析した結果、RP摂取による血糖上昇抑制はインスリン成長因子結合タンパク3型(Igfbp3)を介した効果、腎症進行抑制は炎症反応の抑制によることが推察された。一方、RBPでは血糖上昇抑制に解糖系の律速酵素関連遺伝子の発現増加が関与し、腎臓では炎症反応抑制および酸化ストレスの軽減による可能性が推察された。さらに、肝臓と腎臓のメタボローム解析を試みた結果、肝臓では、RP・RBP両群で解糖系やβ酸化経路の亢進、抗酸化物質の増加による肝機能正常化が示唆されたが、腎臓での解析は難しく、さらなる検討が必要である。本研究結果より、RP及びRBPの長期摂取が2型糖尿病、脂肪肝、及び糖尿病性腎症を含む慢性腎臓病の予防や重症化予防にヒトにおいても有効であることを確認できれば、米を主食とする食生活に科学的根拠を与えて、米の消費拡大とともに医療費削減に貢献できる。
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J Nutr Sci Vitaminol.
巻: 60 ページ: 300-304