研究課題
基盤研究(C)
食品由来の機能性因子について生体レベルで正確に評価出来る系を確立し、糖尿病合併症予防の作用機序に関して分子メカニズム解析を行うことを目的としている。メチルグリオキサール(MG)は、解糖系及び非酵素的糖化反応(メイラード反応)のカルボニル化合物中間体で反応性が極めて高いため、タンパク質と反応して安定な付加体(Advanced Glycation End-products; AGEs)を生じ、この付加体は糖尿病合併症の発症進展リスクの指標として有望視されている。赤血球の主要な抗酸化酵素であるペルオキシレドキシン6(Prx6)は、その発現量が多く、MGによる修飾を受けやすいことが判明した。詳細なMALDI-TOF/MS/MS解析から、Prx6活性中心Cys-47の酸化修飾およびMG修飾がPrx6酵素活性低下の最重要原因であると示唆された。Prx6の酸化修飾体であるシステインスルホン酸(酸化型Prx6、酸化システイン)を認識する抗体とMG修飾タンパク質とPrx6を認識する抗体を組み合わせることによって、血中でのこれら指標の変動を複合的に(酸化ストレス反応と糖化反応を同時に)評価出来る系の確立を試みた。本年度の研究実施計画として、血中Prx6とMG修飾タンパク質の測定条件検討をマウスおよびヒト血液由来抽出タンパク質を利用して行った。その結果、以下3点(1)微量血液(1 μL)で測定可能、(2)HbA1cと同じ調製法のため臨床検査用血液で同時にあるいは残渣で測定可能、(3)採血が空腹時でなくても良い、の利点が見出された。
2: おおむね順調に進展している
MG修飾Prx6をマーカーとした評価系確立のため、「Prx6とMG修飾タンパク質の測定条件検討」と「MG修飾Prx6の分子標的としての有用性検証」を行い、ともに主な計画を達成した。具体的には、血液由来抽出タンパク質について、ウエスタンブロッティングやELISA法によって定性的、定量的な測定を行い、測定条件設定と同時に、採血の条件(採血状態)とタンパク質抽出条件を決定した。また、これまで糖尿病の臨床マーカーとして利用されてきたHbA1cとの比較検討を行い、同一検体間で高い正の相関が認められた。
ストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルマウスや肥満を伴うdb/dbマウス等を利用して血中MG修飾Prx6が分子標的となり得るか検証を行う課題において、MALDI-TOF/MS解析により修飾Prx6の同定を試みたが、検出限界以下のため成功しなかった。生体成分(血液)由来では、リコンビナントタンパク質とは異なり、ターゲットとなるMG修飾Prx6が極微量であることを鑑み、以下の方法を実施する。既に確立しているMG修飾タンパク質を認識する抗体の詳細なエピトープ解析の技術(OyaらJ Biol Chem. 1999)を応用する。免疫沈降-質量分析(IP-MS)法、つまりMG修飾Prx6ペプチド-抗体-ビーズ複合体に直接マトリクスを混合しMALDI-TOF/MS(島津製作所、京都バイオ計測センター設置)のターゲットとした測定を実施する。現在、島津製作所研究員の技術的協力を得て既に進行中である。
MG修飾Prx6の有用性検証を引き続き行うため、次年度使用研究費の多くは、全タンパク質蛍光染色検出試薬、質量分析関連試薬(タンパク質消化酵素、マトリックス等)、アッセイ系の確立のために使用する種々の生化学試薬、分子生物学的試薬、特異性が高く高感度な抗体、ELISA測定に使用するプラスチック類器具(96穴プレートを含む)等、消耗品費が占める。
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