研究課題
基盤研究(C)
大阪の農業と食文化を支えてきた歴史や伝統を持つ大阪独特の野菜である「なにわ伝統野菜」の生理作用として生活習慣病の予防効果についての科学的知見を明らかにすることを目的として、以下の2点について解析した。1) 分離肝細胞によるin vitroアルコール性肝炎モデルを用いて、玉造黒門越瓜抽出物によるアルコール性肝炎予防効果の作用メカニズムについて検討したところ、玉造黒門越瓜抽出物は、エタノールによって誘導された酸化ストレスを軽減させることによって、肝細胞障害を抑制することが明らかとなった。また、その作用メカニズムとして、玉造黒門越瓜抽出物は、アルコール脱水素酵素の発現量を増加させ、一方で、薬物代謝酵素の Cytochrome P450 (CYP2E1) の発現量を低下させることによって、CYP2E1 が産生する活性酸素種量を減少させて、酸化ストレスから防御していることが示唆された。さらに、これらの効果は一般の白瓜には認められないことから、玉造黒門越瓜に特異的な作用であることが明らかとなった。2)我々が開発したin vivo アルコール性肝疾患モデルラットを用いて、玉造黒門越瓜抽出物によるアルコール性肝疾患の予防効果について検討したところ、玉造黒門越瓜抽出物は、肝障害の指標となる血中の逸脱酵素(AST、ALT、LDH)活性値を顕著に低下させること、肝臓中の過酸化脂質産生量を低下させること、病理組織学的解析結果から肝障害(肝細胞変性や肝線維化)をコントロールレベルにまで抑制させることが明らかとなった。これらの結果より玉造黒門越瓜は、一般の白瓜には認められないアルコール性肝疾患の予防効果を示したことから、「なにわ伝統野菜」の優位性がもたらされたこと、さらに、地域農家の活性化の一端につながる可能性が見出された。
2: おおむね順調に進展している
玉造黒門越瓜のアルコール性肝疾患予防効果とその作用メカニズムを細胞レベルおよび動物レベルで明らかにすることができた。また、この効果は一般の白瓜には認められないことから、「なにわ伝統野菜」の優位性がもたらされたこと、さらに、地域農家の活性化の一端につながる可能性が見出された。
平成24年度では、玉造黒門越瓜抽出物のアルコール性肝疾患予防効果とその作用メカニズムを明らかにした。本年度は、より詳細なアルコール性肝疾患予防効果の作用メカニズムを検討するとともに、その他の生活習慣病(肥満)予防効果および抗老化作用について検討する。
該当なし
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