研究課題
本研究では、ビタミンAや脂質・糖質の吸収・代謝機能に及ぼす胎生期や授乳期の栄養状態の影響についてラットをモデル動物として検討を行った。24、25年度は、授乳期の食餌制限が、成長後の仔ラットに及ぼす影響について検討を行った。授乳期間中の母親ラットの食餌制限(30%)により、成長後の雄性仔ラット(19週齢)では、対照群に比べ経口脂肪負荷後の血清トリグリセリド濃度の上昇の抑制がみられ、肝臓では脂肪酸の燃焼亢進と合成抑制によるトリグリセリド量の低下がみられた。また、仔ラット空腸の糖質の消化・吸収関連遺伝子の発現量や糖負荷後の血清グルコース濃度変動にほとんど差は見られなかったが、血清インスリン濃度の変動が低い傾向を示したことから、インスリン感受性が高いと考えられた。さらに19週齢時の仔ラットの肝臓総レチノール量が有意に高い値を示し、その要因として小腸のビタミンA吸収能の亢進と肝臓でのビタミンAの再エステル化亢進が関与している可能性が示唆された。26年度は、妊娠初期から授乳期にかけての高脂肪食摂取が、成長後の仔ラットに及ぼす影響について検討を行った。妊娠期から高脂肪食を摂取した母親ラットの仔は、対象群と比べ成長後(21週齢)に内臓脂肪の蓄積が起こりやすく、血清トリグリセリド濃度、遊離脂肪酸濃度およびレプチン濃度はいずれも有意に高値を示した。さらに成長後にも高脂肪食を摂取した群では、肝臓トリグリセリド量の増大が特に顕著であった。これらの結果から、妊娠・授乳期の高脂肪食の摂取は、成長後の仔ラットの体脂肪や肝臓トリグリセリド量の増大などの脂質代謝障害を招きやすいことが示された。妊娠期から高脂肪食を摂取した母親ラットの仔は、対象群と比べ成長後の肝臓総レチノール量に差はみられなかったが、肝臓遊離レチノール量は低値を示しており、その要因としてレチニルエステルの加水分解能の低下が考えられた。
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